そして、日時をどうするか、苦手な食べ物やアレルギーはないか、仕入れて置いてほしいお酒はあるかなど、細かい打ち合わせを進めていった。
 いつものようにたくさんのお客さんをくるくると接客するのも楽しいが、一組のお客さんのためにあれこれ考えるのもなかなか楽しい。

「さぁ。決めておくことは、こんなものですかね」
「あの、実はもう一つ相談が……」

 そろそろ《りんごの木》の開店時間が近づいて来たころ、大地君はとびきり恥ずかしそうに口を開いた。

「俺、プロポーズまでにやせたくて……。ダイエットのアドバイスをもらえたら、すごくうれしいなー、なんて」

 ダイエット……?

 思ってもみなかった内容に、《りんごの木》のメンバーは驚いてしまった。たしかに大地君はふっくら気味だけれど、まさかレストランで相談するとは思わなかったのだ。

「大地君、太ったの?」
「彼女と付き合い始めてから、ゆっくり十キロも……。デートでおいしいものばかり食べてたら、こんな体型にぃっ!」

 ましろが大地君に出会った時には、すでに太った後だったらしい。大地君は、食べ歩きデートやB級グルメフェス、スイーツビュッフェやカニ食べ放題ツアーの話をしてくれた。

「言われてみれば、昔の大地君は筋肉質だった気がするわ」

 恩田さんは「これは私たちの出番ね!」と、立ち上がった。

 私たち? まさか……。

 ましろは、恩田さんと視線がバチィッと合ってしまった。

「大地君のダイエットは、私たち女子で監督しましょう!」
「ありがとうございます! 恩田さん! ましろちゃん!」
「えええええーーっ!」

 わたしもダイエット班なのーっ?

 ましろが「恩田さん、あの、あのーっ!」と言っても、もう遅かった。恩田さんと大地君は、運動や食生活の話で大盛り上がりしているのだ。

 わたし、運動苦手なんだよ~っ!

「へへっ。ましろ、がんばれよ!」
「アリス君! 人ごとだからって!」

 アリス君は、にやにやしながらふんぞり返っている。そして、聞きたくなかった一言を口にした。

「恩田さん、ダイエットマニアだから大変だろうな」

 ひぇ~! わたし、大丈夫かなぁ。