「うわぁ、今週もきれいなお花だね!」
「だろう? これは、サルビアの花なんだ。花言葉は、『家族愛』。いいだろう?」

 大地君は、鮮やかな赤色の切り花を持っていた。とてもきれいでかわいらしい花だ。

「すてきですね。すぐに飾らせてもらいます」

 りんごおじさんはうれしそうに花を受け取り、奥に花びんを探しに行こうとした。けれど、それを大地君が引き止めた。

「まっ、待ってください。実は、相談があるんです!」

 なんだろう? と、ましろとりんごおじさんは思わず顔を見合わせた。


***
「すみません。時間を取らせちゃって」

 大地君は、アリス君が出した【金太郎の黄金プリン】をぺろりとたいらげ、ホッとひと息ついていた。

「大地さん! もっと味わってくださいよ! このプリンの黄金色は、超濃くて濃厚な卵を使って、それで……」
「アリス君、分かった分かった。美味しく食べてくれるなら、いいじゃない」

 今日はお昼が忙しかったらしく、仕事を終えたばかりの恩田さんがまだお店に残っている。なんだかにぎやかな感じがして、ましろはそれだけで楽しくなっってしまう。しかも、開店前に大地君を囲んでみんなでお茶タイム、という楽しいイレギュラー付きだ。

「それで、大地君の相談とは?」

 りんごおじさんが尋ね、《りんごの木》のメンバー全員の視線が大地君に集まる。そして当の大地君は、照れくさそうに頭をかいている。

「来月、《りんごの木》さんで、彼女にプロポーズをしたいんです」

 プロポーズ!

 ちょうど今日の恋バナを思い出して、ましろはドキドキしてしまった。

「プロポーズって、結婚してくださいってヤツだよね? だよね?」

 ましろがはしゃぐと、りんごおじさんも「大事なイベントに、うちを選んでくれてうれしいですね」と笑顔になった。

「なんなら、貸し切りにしましょう。いつもお世話になっていますから」
「ありがとうございます! 白雪店長! 俺、こうしたいっていうのが、ちょっとあって」

 大地君は、どうやらその相談がしたかったらしい。

 当日、《りんごの木》を彼女の好きなバラの花で飾りたいこと(もちろん花は、《花かご》の花)。メインディッシュを彼女の大好物である、ぎょうざにしてほしいこと。