りんごおじさんに代わってましろが急いで駆けつけると、なんと乙葉さんの足元に水たまりができていた。
「あぁっ! ど、どうしよう! ごめんなさい!」
「謝ってる場合じゃないわ!」
すでに恩田さんが乙葉のそばに来ていた。そしてピリッとした声で叫ぶと、おろおろする乙葉さんをなだめた。
「落ち着いて。大丈夫よ。陣痛は? おなかは痛くない?」
「ま、まだ来てません」
「じゃあ、先に破水したのね。母子手帳と保険証は持ってる? かかりつけの病院はどこ?」
質問を飛ばす恩田さんを見ても、ましろは何が起きているか分からず、乙葉さんよりもおろおろしていた。
「ハスイって何? 赤ちゃん、産まれるの?」
「陣痛がまだだから、すぐに出産にはならないはず……。でも、破水するとおなかの羊水が出てしまってる状態だから、病院に行かなきゃいけないわ」
「わたし、何したらいい?」
「タオルを持って来て! それから、店長にはタクシーを呼ぶように言って!」
恩田さんに指示されて、ましろは「はい!」と弾かれたように動き出した。
正直に言うと、恩田さんの説明は、知らない言葉が多くて、よく分からなかった。けれど乙葉さんと赤ちゃんにとって、とても大事な時がやって来たことは理解できた。
震えながら病院に電話をする乙葉さん。そして乙葉さんを励ます恩田さんを見て、ましろは胸がぎゅうっとなった。
「タクシーが来ました!」
お店の外のりんごおじさんに呼ばれて、スカートの上からタオルを巻いた乙葉さんはよろよろとタクシーに向かっていく。
「私、ご主人が来るまで付き添うわ」
「恩田さん、ありがとうございます。あの……、ましろちゃんも……」
恩田さんに支えられていた乙葉さんは、くるりと後ろを振り返ってましろの手を取った。
「ましろちゃん、来て」
「わたし……、行ってもいいの?」
ましろは、不安そうな乙葉さんの手をキュッと握り返した。
何も分からない自分では邪魔になってしまうのではないかと思っていたのに、乙葉さんにそう言われて、ましろはびっくりしてしまった。そして同時に、胸の温度が跳ね上がる。
「りんごおじさん! わたし、乙葉さんについて行く!」
「あぁっ! ど、どうしよう! ごめんなさい!」
「謝ってる場合じゃないわ!」
すでに恩田さんが乙葉のそばに来ていた。そしてピリッとした声で叫ぶと、おろおろする乙葉さんをなだめた。
「落ち着いて。大丈夫よ。陣痛は? おなかは痛くない?」
「ま、まだ来てません」
「じゃあ、先に破水したのね。母子手帳と保険証は持ってる? かかりつけの病院はどこ?」
質問を飛ばす恩田さんを見ても、ましろは何が起きているか分からず、乙葉さんよりもおろおろしていた。
「ハスイって何? 赤ちゃん、産まれるの?」
「陣痛がまだだから、すぐに出産にはならないはず……。でも、破水するとおなかの羊水が出てしまってる状態だから、病院に行かなきゃいけないわ」
「わたし、何したらいい?」
「タオルを持って来て! それから、店長にはタクシーを呼ぶように言って!」
恩田さんに指示されて、ましろは「はい!」と弾かれたように動き出した。
正直に言うと、恩田さんの説明は、知らない言葉が多くて、よく分からなかった。けれど乙葉さんと赤ちゃんにとって、とても大事な時がやって来たことは理解できた。
震えながら病院に電話をする乙葉さん。そして乙葉さんを励ます恩田さんを見て、ましろは胸がぎゅうっとなった。
「タクシーが来ました!」
お店の外のりんごおじさんに呼ばれて、スカートの上からタオルを巻いた乙葉さんはよろよろとタクシーに向かっていく。
「私、ご主人が来るまで付き添うわ」
「恩田さん、ありがとうございます。あの……、ましろちゃんも……」
恩田さんに支えられていた乙葉さんは、くるりと後ろを振り返ってましろの手を取った。
「ましろちゃん、来て」
「わたし……、行ってもいいの?」
ましろは、不安そうな乙葉さんの手をキュッと握り返した。
何も分からない自分では邪魔になってしまうのではないかと思っていたのに、乙葉さんにそう言われて、ましろはびっくりしてしまった。そして同時に、胸の温度が跳ね上がる。
「りんごおじさん! わたし、乙葉さんについて行く!」



