パン生地は口当たりがサクサクとしていて、中身のカレーは、甘すぎず辛すぎずちょうどいい。そしてなんといっても、とろけたチーズとごろごろしたほくほくのじゃがいもが、口の中いっぱいを幸福感で満たしてくれる。 

「ん~っ! おいしい!」
「こちらもおいしいです。具が飛び出してますけど」
「ちょっと欲張りすぎちゃったんだよ。許して」

 失敗作のカレーパンだと思って落ち込んでいたけれど、ましろは、りんごおじさんが笑いながら食べてくれることがうれしかった。

 あんなにしょんぼりしてたのに、今はこんなに楽しい。

「ましろさん。今季は逃してしまいましたが、来年はあじさいモンブランを必ず食べに行きましょう! リベンジしましょう!」

 具の飛び出たカレーパンを食べにくそうにしながら、りんごおじさんは力強く言った。

「来年?」
「はい。遅くなってしまいますけど」
「いいよ。待ってる」

 それって、来年もいっしょにいてくれるってことだよね。

 ましろはうれしくなって、思わず「ふふっ」と笑顔になった。