そんな小さなつぶやきは、りんごおじさんの「カレーパンが焼けましたよ!」という明るい声にかき消された。
「ましろ、カレーパン取りにいこ!」
「うん!」
ましろは、桃奈に手を引かれて、中央の調理台に移動した。そこには各ペアごとの鉄板があり、焼きあがったばかりのカレーパンがずらりと並んでいた。
「あたしとましろのは……。あっ!」
自分たちのカレーパンを見つけた桃奈は、一瞬気まずそうな顔をした。理由はすぐに分かった。
「わたしのカレーパン、中身がはみ出てる……」
ましろの作ったカレーパンだけが、具が飛び出していびつな形になってしまっていたのだ。欲張って具を入れ過ぎてしまったのだろう。
「せっかく作ったのに……」
「ましろ、元気出しなよ! 味は同じだって」
桃奈に励まされて、ましろは「そうだよね……」としょんぼりとうなずいた。けれど、ヤケになって具を詰め込んだ結果が悲しくて仕方ない。
何やってるんだろ、わたし。
その後は焼き立てのカレーパンをみんなで食べる時間だったけれど、ましろは破裂気味のトマトチーズカレーパンだけを食べて、じゃがいもとチーズのは持って帰ることにした。味はおいしかったけれど、カレーパンの形が悪すぎてみんなの前で食べるのが恥ずかしかったのだ。
とくに、りんごおじさんと茉莉花には見られたくなかった。
「白雪せんせーっ! 見て見て~! すっごくきれいに焼けました~! せんせえのおかげですぅ」
「本当ですね。よくできましたね」
ご機嫌にカレーパンを見せびらかす茉莉花と、それをほめるりんごおじさん。
がんばったけど、わたしのは「よくできました」じゃないよね……。
***
マンションに帰って来たましろは、ソファに突っ伏せて、伸び切ったお餅のようになっていた。持って帰って来たカレーパンは、ダイニングテーブルに置きっぱなしになっている。
「どうでもいいのに。りんごおじさんも、カレーパンも……」
その時、玄関のドアがガチャリと開いて、りんごおじさんが帰って来た。
「戻りました。ましろさん、寝ているんですか?」
「起きてる」
「ましろ、カレーパン取りにいこ!」
「うん!」
ましろは、桃奈に手を引かれて、中央の調理台に移動した。そこには各ペアごとの鉄板があり、焼きあがったばかりのカレーパンがずらりと並んでいた。
「あたしとましろのは……。あっ!」
自分たちのカレーパンを見つけた桃奈は、一瞬気まずそうな顔をした。理由はすぐに分かった。
「わたしのカレーパン、中身がはみ出てる……」
ましろの作ったカレーパンだけが、具が飛び出していびつな形になってしまっていたのだ。欲張って具を入れ過ぎてしまったのだろう。
「せっかく作ったのに……」
「ましろ、元気出しなよ! 味は同じだって」
桃奈に励まされて、ましろは「そうだよね……」としょんぼりとうなずいた。けれど、ヤケになって具を詰め込んだ結果が悲しくて仕方ない。
何やってるんだろ、わたし。
その後は焼き立てのカレーパンをみんなで食べる時間だったけれど、ましろは破裂気味のトマトチーズカレーパンだけを食べて、じゃがいもとチーズのは持って帰ることにした。味はおいしかったけれど、カレーパンの形が悪すぎてみんなの前で食べるのが恥ずかしかったのだ。
とくに、りんごおじさんと茉莉花には見られたくなかった。
「白雪せんせーっ! 見て見て~! すっごくきれいに焼けました~! せんせえのおかげですぅ」
「本当ですね。よくできましたね」
ご機嫌にカレーパンを見せびらかす茉莉花と、それをほめるりんごおじさん。
がんばったけど、わたしのは「よくできました」じゃないよね……。
***
マンションに帰って来たましろは、ソファに突っ伏せて、伸び切ったお餅のようになっていた。持って帰って来たカレーパンは、ダイニングテーブルに置きっぱなしになっている。
「どうでもいいのに。りんごおじさんも、カレーパンも……」
その時、玄関のドアがガチャリと開いて、りんごおじさんが帰って来た。
「戻りました。ましろさん、寝ているんですか?」
「起きてる」



