おとぎの店の白雪姫

「少し上がれば、世界遺産にもなっている神社やお寺。少し下がれば、桜のきれいな川や紅葉のきれいな自然公園。西と東には、若者の集まるショッピング街。その真ん中にちょこんとあるのが、おとぎ商店街です。のんびりしていて、いい所なんです」
「へぇ~。観光地だから、もっとガヤガヤしてるのかと思ってました」

 おとぎ商店街は、りんごおじさんが言う通り、たしかにのんびりとした雰囲気だ。

 ましろが通って来た隣の筋の童話商店街は、もっと派手で賑やかで、若者がいっぱい歩いていたけれど、ここにはゆっくり歩く子連れのお母さんや、散歩をしている老夫婦なんかが目につく。

 ましろは余計なお世話とは思いつつ、「お客さんは来ているのかな、レストランの売り上げは大丈夫なのかな?」と、心配になってしまった。



 そして、おとぎ商店街を抜けてしばらく歩くと、きれいなマンションの前に出た。各部屋はそれほど大きくなく、夫婦や一人暮らしの人が多く住んでいると、りんごおじさんは教えてくれた。

「僕たちの家は、304号室です。で、ここがましろさんの部屋ですよ」

 りんごおじさんに案内され、ましろはおずおずと部屋に入った――が、そこはましろが前の家で使っていた勉強机やベッド、本棚、他には服の入った段ボール箱なんかがぎゅうぎゅうに運び込まれていて、なんだかジャングルにたいになっていた。

 うっ! 迫力がすごい!
 
 自分の荷物は極力減らしてきたつもりだが、思わず圧倒されてしまった。

「すみません。もっときれいに並べられたら良かったんですが……。荷ほどきはお手伝いしますよ! 収納グッズなんかも買い足しましょう!……」
「いっ、いいです。十分です!」

 すまなそうに謝るりんごおじさんに、ましろはコクコクと大きくうなずき、「ありがとうございます」とお礼を言った。

 ましろは、ただでさえ自分を引き取ってくれた優しいりんごおじさんに、これ以上お金や時間を使わせることが、とても申し訳なく感じてしまったのだ。

「そうですか……。じゃあ、僕はひとまず戻りますね。何かあったらお店に電話してください」

 りんごおじさんは少し寂しそうに眉毛をハの字にしながら、「お昼ご飯はリビングのカウンターに置いてあるので、食べてくださいね」と言い残して出て行った。



「分かりましたよーっと」