「世界遺産になってる所ですか?」
「そーそー」

 シエラは、ましろに神社やお寺で撮った写真をたくさん見せてくれた。ましろも先日、りんごおじさんに連れて行ってもらったので、それが世界遺産になっている有名な場所だと分かった。

「でもシエラ、この後どこ行くか決めてないんだよね~。この辺って何もなさそうだし」
「あの! よかったら、わたしが案内しましょうか?」

 ましろは、思い切って提案した。

「わたし、楽しい場所とかきれいな場所は、いっぱい知ってます!」

 この町に来てから日は浅いけれど、ステキなところはたくさん見てきた。だから、教えてあげたい。そして何より、落ちこんだ顔をしていたシエラを元気にしたかった。

「ホント? うれしいなぁ、ありがとう!」

 シエラによしよしと頭をなでられて、ましろは舞い上がりそうになった。

 やったー! シエラちゃんとおとぎ町観光だ!




 ***
 ましろは、りんごおじさんに何度も「気をつけて行くんですよ」と念を押されて、《りんごの木》を出発した。

 そしてシエラにはメガネと帽子とマスクで変装してもらって、準備は念入りに済ませた。

「やだぁ! 暑い~」
「灰咲シエラが来てるって広まったらダメでしょう? お忍び観光ですし」

「たしかに」と、シエラは不満そうにうなずく。

「シエラ、お腹空いちゃった~。なにか食べれる所に連れてってほしいな」
「え! さっきランチ食べたのに!」

 お店を出てすぐにお腹をさするシエラに、ましろはびっくりしてしまった。ヘルシーなサラダランチとはいえ、シエラはパンだってたくさんお代わりしていたのだ。

「えへへ。シエラ、実は大食いなんだよね。楽屋のお弁当も、五人分食べちゃうくらい」
「えぇーっ!」

 シエラちゃん、おそるべし! こんなにスリムなのにびっくり!

「じゃあ、おとぎ商店街で食べ歩きしましょう!」


***
 おとぎ商店街には、観光客もぶらりとやって来る隠れた名店がたくさんある。

 まずは、おとうふ屋さん。

「へい、らっしゃい! ましろちゃん、今日は店長さんといっしょじゃないのかい?」

 白いハチマキを巻いたお豆腐屋のおじさんは、今日も威勢がいい。