りんごおじさんにメモを渡され、琥太郎君は食い入るようにそれを見ていた。そして、おかしそうに笑った。
「ぷっ。おれの好物に野菜炒めが入ってる。父ちゃんがそれしか作れなくてさ。しょっちゅう食べんだけど、おれ、そんなに美味そうにしてたのかな」
「きっとそうですよ」
りんごおじさんは「愛がこもっている料理だから」、なんてキザなことは言わなかったけれど、うれしそうにうなずいていた。
「さて、僕は今からディナーを作りますね。琥太郎君とましろさんは、宿題をして待っていてくださいね」
りんごおじさんは、サラッと宿題をするようにすすめてきた。
うっ。逃げられない!
ましろは琥太郎君とおしゃべりでもしようかと思っていたけれど、大人しく宿題をするしかないようだ。琥太郎君も、しぶしぶ算数ドリルをランドセルから引っ張り出している。
そしてましろが算数と国語の宿題を終え、うとうとと居眠りから目覚めると、夜の六時を少し過ぎていた。
「あれ! 約束の時間、過ぎてる!」
「ほら、やっぱ父ちゃんはうそつきじゃんか」
ましろの隣では、琥太郎君がしょんぼりした様子でうつむいていた。
「仕事は先ほど終わったと、お父さんから電話がありましたよ。ただ、駅の方で事故があってバスがなかなか来ないので、走って来られるそうです」
りんごおじさんはお店の奥で電話を取っていたらしい。琥太郎君の近くにやって来て、「きっともう少しですよ」と声をかけた。
「駅から走るとか、父ちゃんバカかよ」
「いても立ってもいられなかったんでしょう」
りんごおじさんはそう言うけれど、たしかに駅から《りんごの木》まで走って来るのは大変だ。たしかアリス君が「オレが自転車を爆走させたら二十分だ!」と言っていたので、人の足だともっと時間がかかるし疲れるだろう。それに《りんごの木》は、おとぎ商店街の中でも少し引っこんだ所にあるため、初めて来る人は、とても迷いやすいことも心配だ。
「わたし、琥太郎君のお父さんを迎えに行って来るよ!」
ましろは、パッとひらめいた案を口にした。
「駅までの道は真っ直ぐだから分かるし、きっと途中で会えると思うんだ。わたしが案内した方が、早く来てもらえるよね!」
「たしかに、入れ違いになる道でもないですし、それはそうですが……」
「ぷっ。おれの好物に野菜炒めが入ってる。父ちゃんがそれしか作れなくてさ。しょっちゅう食べんだけど、おれ、そんなに美味そうにしてたのかな」
「きっとそうですよ」
りんごおじさんは「愛がこもっている料理だから」、なんてキザなことは言わなかったけれど、うれしそうにうなずいていた。
「さて、僕は今からディナーを作りますね。琥太郎君とましろさんは、宿題をして待っていてくださいね」
りんごおじさんは、サラッと宿題をするようにすすめてきた。
うっ。逃げられない!
ましろは琥太郎君とおしゃべりでもしようかと思っていたけれど、大人しく宿題をするしかないようだ。琥太郎君も、しぶしぶ算数ドリルをランドセルから引っ張り出している。
そしてましろが算数と国語の宿題を終え、うとうとと居眠りから目覚めると、夜の六時を少し過ぎていた。
「あれ! 約束の時間、過ぎてる!」
「ほら、やっぱ父ちゃんはうそつきじゃんか」
ましろの隣では、琥太郎君がしょんぼりした様子でうつむいていた。
「仕事は先ほど終わったと、お父さんから電話がありましたよ。ただ、駅の方で事故があってバスがなかなか来ないので、走って来られるそうです」
りんごおじさんはお店の奥で電話を取っていたらしい。琥太郎君の近くにやって来て、「きっともう少しですよ」と声をかけた。
「駅から走るとか、父ちゃんバカかよ」
「いても立ってもいられなかったんでしょう」
りんごおじさんはそう言うけれど、たしかに駅から《りんごの木》まで走って来るのは大変だ。たしかアリス君が「オレが自転車を爆走させたら二十分だ!」と言っていたので、人の足だともっと時間がかかるし疲れるだろう。それに《りんごの木》は、おとぎ商店街の中でも少し引っこんだ所にあるため、初めて来る人は、とても迷いやすいことも心配だ。
「わたし、琥太郎君のお父さんを迎えに行って来るよ!」
ましろは、パッとひらめいた案を口にした。
「駅までの道は真っ直ぐだから分かるし、きっと途中で会えると思うんだ。わたしが案内した方が、早く来てもらえるよね!」
「たしかに、入れ違いになる道でもないですし、それはそうですが……」



