そんなおしゃべりをしていると、普段あまり話さないクラスメイト、金崎琥太郎がましろの側にやって来た。
「白雪の家、父ちゃんが来てんの?」
琥太郎君は、短い髪の毛がハリネズミみたいにツンツンしている、空手がとても得意な男の子だ。クラスのみんなから「コタロー」と呼ばれていて、転校生のましろでもすぐに覚えたくらいだ。
「あのメガネの人、父ちゃんだろ?」
「ちょっと、コタロー! ましろの家は……!」
事情を話してある桃奈は、琥太郎君を止めようとしたが、ましろは「大丈夫」と隠さずに答えることにした。
「お父さんは、離婚したからいないよ。あの人は、亡くなったお母さんの弟。わたしのおじさん。りんごおじさんって言うんだよ」
堂々とするましろに琥太郎君は戸惑った様子を見せたけれど、「良い人そうじゃん」と言葉を続けた。
「男の家族が参観日に来るのって、ちょっとめずらしいなと思ってさ。うちは父ちゃんが来るから、仲良くしてくれって、おじさんに言っといてくれ!」
そう言うと、琥太郎君はバタバタと自分の席に戻って行った。
多分、お父さんのことが大好きなんだなぁ。
ましろは桃奈と顔を見合わして、クスッと笑った。
けれど、いくら経っても琥太郎君のお父さんは現れなかった。教室の後ろにいる男の人は、りんごおじさんの他には、ましろ近所に住んでいる子のお父さんしかいない。
なんでだろう。授業、終わっちゃうよ。
ましろは国語の教科書に隠れてこっそりとのぞくと、琥太郎君は暗い顔をしてうつむいていた。
そしてとうとう授業参観は終わってしまった──、その時、教室の後ろのドアがガラガラッと勢いよく開いた。
「おっ、遅れてごめん! コタ!」
スーツ姿のおじさんが、息を切らせて教室に入って来たのだ。
コタ?……琥太郎だ!
「うるせーっ! もう終わったっつーの!」
琥太郎君は終わりのチャイムと共に、大声で怒鳴った。
「いまさら何だよ! バカ父ちゃん!」
「コタ、ほんとごめん! 急な仕事で……!」
琥太郎君のお父さんは必死に謝るけれど、琥太郎君はものすごく怒っている。
「もう、言い訳は聞き飽きたっ!」
「コタ、許してくれ! ほんっとうにごめん!」
「何回目だよ! そんなんだから母ちゃんだって……!」
「白雪の家、父ちゃんが来てんの?」
琥太郎君は、短い髪の毛がハリネズミみたいにツンツンしている、空手がとても得意な男の子だ。クラスのみんなから「コタロー」と呼ばれていて、転校生のましろでもすぐに覚えたくらいだ。
「あのメガネの人、父ちゃんだろ?」
「ちょっと、コタロー! ましろの家は……!」
事情を話してある桃奈は、琥太郎君を止めようとしたが、ましろは「大丈夫」と隠さずに答えることにした。
「お父さんは、離婚したからいないよ。あの人は、亡くなったお母さんの弟。わたしのおじさん。りんごおじさんって言うんだよ」
堂々とするましろに琥太郎君は戸惑った様子を見せたけれど、「良い人そうじゃん」と言葉を続けた。
「男の家族が参観日に来るのって、ちょっとめずらしいなと思ってさ。うちは父ちゃんが来るから、仲良くしてくれって、おじさんに言っといてくれ!」
そう言うと、琥太郎君はバタバタと自分の席に戻って行った。
多分、お父さんのことが大好きなんだなぁ。
ましろは桃奈と顔を見合わして、クスッと笑った。
けれど、いくら経っても琥太郎君のお父さんは現れなかった。教室の後ろにいる男の人は、りんごおじさんの他には、ましろ近所に住んでいる子のお父さんしかいない。
なんでだろう。授業、終わっちゃうよ。
ましろは国語の教科書に隠れてこっそりとのぞくと、琥太郎君は暗い顔をしてうつむいていた。
そしてとうとう授業参観は終わってしまった──、その時、教室の後ろのドアがガラガラッと勢いよく開いた。
「おっ、遅れてごめん! コタ!」
スーツ姿のおじさんが、息を切らせて教室に入って来たのだ。
コタ?……琥太郎だ!
「うるせーっ! もう終わったっつーの!」
琥太郎君は終わりのチャイムと共に、大声で怒鳴った。
「いまさら何だよ! バカ父ちゃん!」
「コタ、ほんとごめん! 急な仕事で……!」
琥太郎君のお父さんは必死に謝るけれど、琥太郎君はものすごく怒っている。
「もう、言い訳は聞き飽きたっ!」
「コタ、許してくれ! ほんっとうにごめん!」
「何回目だよ! そんなんだから母ちゃんだって……!」