「いらっしゃいませ!」
ある日曜日のお昼どき。
ましろはファミリーレストラン《りんごの木》の客席を、ミネラルウォーターの入ったワインボトルを持って回っていた。まだ完璧とはほど遠いけれど、少しずつ接客にも慣れてきている。
「ましろちゃん、なかなか堂々としてきたわね」
今日はお客さんとして来てくれたパートの恩田さんは、嬉しそうにましろに声をかけてくれた。
「ありがとう、恩田さん!」
「オレが教えてるんで、当然っすよ」
アリス君がちょっと意地悪な顔をしながら、デザートを持って現れた。今日のデザートは、メニューに仲間入りしたばかりの【かぐや姫の抹茶ロール】だ。
「アリス君、後輩は、たくさんほめて育てないとダメよ」
恩田さんはロールケーキの写真をパシャリと撮りながら、アリス君に物申してくれた。
それに乗っかって、ましろが「そーだそーだ!」と小声で言うけれど、アリス君は「甘やかしたらダメっすよ」と厳しい態度のままだ。
「調子に乗ると、すぐ注文聞き間違えたり、テーブル間違えるから」
「うわー! アリス君、言わないでよ!」
「ふふふ。仲良しねぇ」
恩田さんはましろを娘みたいにかわいがってくれるから大好きだ。
先日もリボンの付いたヘアゴムをいくつか手作りして来てくれて、ましろはその日から、毎日違う物を選ぶのが楽しくてたまらない。ただし、ましろはポニーテールしかできないし、りんごおじさんは戦力外だから髪型は毎日同じだ。
「恩田さんが作ってくれたヘアゴムね、今度授業参観の日に付けるよ! とっておきの赤色のやつ」
「あら、うれしいわ。参観日は特別だものね」
「参観日って、もしかして明後日っすか?」
アリス君が、納得したようにお店の壁の張り紙見て言った。そこには、『木曜日 お休みします』と書かれている。
「うん! りんごおじさんが来てくれるんだ!」
ましろは、りんごおじさんはお昼はレストランにいるから授業参観には来てくれないだろうと思っていた。けれど、お知らせのプリントを見たりんごおじさんは、「行くに決まってますよ」と少しも悩む素振りも見せなかった。
そのことが、ましろはとてもうれしかった。
「ま、せいぜい店長にいいとこ見せろよ」
アリス君に言われなくても、がんばるもん!
ある日曜日のお昼どき。
ましろはファミリーレストラン《りんごの木》の客席を、ミネラルウォーターの入ったワインボトルを持って回っていた。まだ完璧とはほど遠いけれど、少しずつ接客にも慣れてきている。
「ましろちゃん、なかなか堂々としてきたわね」
今日はお客さんとして来てくれたパートの恩田さんは、嬉しそうにましろに声をかけてくれた。
「ありがとう、恩田さん!」
「オレが教えてるんで、当然っすよ」
アリス君がちょっと意地悪な顔をしながら、デザートを持って現れた。今日のデザートは、メニューに仲間入りしたばかりの【かぐや姫の抹茶ロール】だ。
「アリス君、後輩は、たくさんほめて育てないとダメよ」
恩田さんはロールケーキの写真をパシャリと撮りながら、アリス君に物申してくれた。
それに乗っかって、ましろが「そーだそーだ!」と小声で言うけれど、アリス君は「甘やかしたらダメっすよ」と厳しい態度のままだ。
「調子に乗ると、すぐ注文聞き間違えたり、テーブル間違えるから」
「うわー! アリス君、言わないでよ!」
「ふふふ。仲良しねぇ」
恩田さんはましろを娘みたいにかわいがってくれるから大好きだ。
先日もリボンの付いたヘアゴムをいくつか手作りして来てくれて、ましろはその日から、毎日違う物を選ぶのが楽しくてたまらない。ただし、ましろはポニーテールしかできないし、りんごおじさんは戦力外だから髪型は毎日同じだ。
「恩田さんが作ってくれたヘアゴムね、今度授業参観の日に付けるよ! とっておきの赤色のやつ」
「あら、うれしいわ。参観日は特別だものね」
「参観日って、もしかして明後日っすか?」
アリス君が、納得したようにお店の壁の張り紙見て言った。そこには、『木曜日 お休みします』と書かれている。
「うん! りんごおじさんが来てくれるんだ!」
ましろは、りんごおじさんはお昼はレストランにいるから授業参観には来てくれないだろうと思っていた。けれど、お知らせのプリントを見たりんごおじさんは、「行くに決まってますよ」と少しも悩む素振りも見せなかった。
そのことが、ましろはとてもうれしかった。
「ま、せいぜい店長にいいとこ見せろよ」
アリス君に言われなくても、がんばるもん!