「店のやつだっての」

 それは、ましろの手のひらに乗るくらいの大きさの三つのカップケーキだった。それぞれ、クリームとクッキーでデコレーションされている。

 一つ目は、プレーンのケーキにピンクのクリーム。上には、ピンクのうさ耳の形をしたクッキー。

 二つ目は、プレーンのケーキに白いクリーム。てっぺんにはリボンの形をした空色のクッキー。

 三つ目は、ココアのケーキにウグイス色のクリーム。ななめに濃い緑色のシルクハットのクッキー。

「カラフルですっごくかわいい! どうやって色が付いてるの?」
「クリームは、苺とマスカルポーネクリームチーズと抹茶。クッキーはアイシングって言って、まぁ、それ用の粉を使うんだけど……、って聞いてんのか?」

 ましろは質問しておきながら、かわいいカップケーキの観察に夢中になっていた。

 これって、インスタ映えってやつじゃない?

「アリス君すごいね! こんなの作れちゃうんだね! 写真撮る?」
「いいから、早く食べて感想聞かせろ」
「やったー! 任せてよ! いただきまーす!」

 そんなお願いなら大歓迎!

 食べるのがもったいないけれど、ましろは大喜びでカップケーキにかぶりついた。

「ん~!」

 クリームが思ったよりさっぱりとしていて、バターたっぷりのケーキと相性バツグン! 上のクッキーもサクサクでおいしい。

 ましろはぱくぱく食べ進め、あっという間にカップケーキはなくなってしまった。

「おかわりは……?」
「これ以上ほしけりゃ、注文しろ」
「えぇーっ! もっと食べたいよー!」

 いくらでも食べれてしまいそうで、少し怖いくらいおいしい。 

「アリス君って、お菓子作りが上手なんだね。すごい!」
「店長のおかげだよ。あの人が教えてくれたから、どんどんお菓子作りが好きになったし、お客さんに出せるレベルになったんだ」
「じゃあ、アリス君はりんごおじさんの弟子だね!」
「弟子……。うん、そうだな。店長はオレの師匠だ」

 アリス君は、照れながら言葉を続ける。

「オレは料理人じゃなくて、将来はパティシエになれたらいいなって思ってる。専門学校で勉強して、フランスにも行きたい」

 パティシエは、お菓子の職人さんのことだ。なんてステキな夢だろう!

「きっとなれるよ! わたしが保証してあげる!」