アリス君は、スパルタだった。「いらっしゃいませ」を何度も何度も繰り返した後は、「ありがとうございました」。その後は歩き方の練習で、お店のテーブルの周りををぐるぐると何周も回らされた。
「アリス君、疲れたよーっ!」
「これくらいで弱音はいてたら、店には立てない……って、その靴じゃしんどいか」
ましろの靴は、ちょっと底が重たいオシャレなスニーカーだった。おじいちゃんとおばあちゃんが、引っ越しの直前に買ってくれた靴だ。
「日曜までに、店ではく軽くて滑りにくい靴、親に買ってもらえよ」
親……。そっか、アリス君は知らないんだ。
ましろは、一瞬言おうかどうか迷った。けれど、この楽しい時間を壊したくないと思い、笑顔を作って返事をした。
「そだね! アリス君のみたいな、かっこいい靴がほしいな。りんごおじさんにお願いしてみる」
「あぁ、そうしろ。立ち仕事だからな」
ふわぁぁ~っと、アリス君はあくびをすると、壁の時計をチラリと確認していた。ディナータイムまでの準備時間を計算しているようだった。
「ましろ、すぐには帰らないよな?」
「うん。なんなら、夜ご飯までここで学校の宿題したいくらい」
「ふぅん。そっかそっか」
アリス君、そわそわしている。どうしたんだろう。
ましろがきょとんとしていると、アリス君は照れくさそうにキッチンに入って行く。そして、冷蔵庫からデザートのストックを入れている容器を取り出して来た。
「オレのおごりだ。食べようぜ」
「わーい! いいのーっ?」
ましろは思わず大きな声で喜んだ。
《りんごの木》のデザートを食べるのは初めてだ。どんな味なのかわくわくする。
「りんごおじさんが作ってるやつだし、変な名前が付いてるんじゃない?」
「【アリスのお茶会カップケーキ】……。オレだよ! 店のデザート作ってんのは!」
「えっ! アリス君が? 大丈夫なの?」
「お前、失礼だな! 先月から任せてもらって、けっこう評判いいんだぞ!」
アリス君は、お菓子作りとは縁がなさそうなお兄さんに見えたため、ましろは思わず疑ってしまった。けれど、アリス君がムキになっているから本当なのだろう。
とにかく食べさせてもらおうと、ましろはかしこまってカップケーキを拝んだ。
「おいしそう。お店のやつみたい」
「アリス君、疲れたよーっ!」
「これくらいで弱音はいてたら、店には立てない……って、その靴じゃしんどいか」
ましろの靴は、ちょっと底が重たいオシャレなスニーカーだった。おじいちゃんとおばあちゃんが、引っ越しの直前に買ってくれた靴だ。
「日曜までに、店ではく軽くて滑りにくい靴、親に買ってもらえよ」
親……。そっか、アリス君は知らないんだ。
ましろは、一瞬言おうかどうか迷った。けれど、この楽しい時間を壊したくないと思い、笑顔を作って返事をした。
「そだね! アリス君のみたいな、かっこいい靴がほしいな。りんごおじさんにお願いしてみる」
「あぁ、そうしろ。立ち仕事だからな」
ふわぁぁ~っと、アリス君はあくびをすると、壁の時計をチラリと確認していた。ディナータイムまでの準備時間を計算しているようだった。
「ましろ、すぐには帰らないよな?」
「うん。なんなら、夜ご飯までここで学校の宿題したいくらい」
「ふぅん。そっかそっか」
アリス君、そわそわしている。どうしたんだろう。
ましろがきょとんとしていると、アリス君は照れくさそうにキッチンに入って行く。そして、冷蔵庫からデザートのストックを入れている容器を取り出して来た。
「オレのおごりだ。食べようぜ」
「わーい! いいのーっ?」
ましろは思わず大きな声で喜んだ。
《りんごの木》のデザートを食べるのは初めてだ。どんな味なのかわくわくする。
「りんごおじさんが作ってるやつだし、変な名前が付いてるんじゃない?」
「【アリスのお茶会カップケーキ】……。オレだよ! 店のデザート作ってんのは!」
「えっ! アリス君が? 大丈夫なの?」
「お前、失礼だな! 先月から任せてもらって、けっこう評判いいんだぞ!」
アリス君は、お菓子作りとは縁がなさそうなお兄さんに見えたため、ましろは思わず疑ってしまった。けれど、アリス君がムキになっているから本当なのだろう。
とにかく食べさせてもらおうと、ましろはかしこまってカップケーキを拝んだ。
「おいしそう。お店のやつみたい」



