月曜日──。
白雪ましろは、おとぎ小学校の転校初日にやらかしてしまった。
いきなりの遅刻だ。寝坊ではない。
「すみません。朝ご飯がおいしすぎて、いっぱい食べてたらこんな時間に……」
五年二組の教室が、朝から明るい笑いに包まれたのだが、ましろとしては不本意だ。
本当は自己紹介をビシッと決めて、クールビューティーなキャラを定着させようかと思っていたのに、いきなり大失敗だ。
それもこれも、おいしいご飯を作るりんごおじさんのせいだ。
「ましろさん、今朝は【プリンセスの朝ごはん】ですよ」と、満面の笑みでキッチンから出て来たりんごおじさんの両腕には、お皿が全部で五枚も乗っていた。
不思議なネーミングはさておいて、右にはコーンポタージュ、海藻サラダ、スクランブルエッグとカリカリベーコン。左にはロールパンとデニッシュ、そしてカットされたグレープフルーツ。リビングのテーブルはノートだらけなので、カウンターテーブルにお皿がズラリと並ぶ様子は、なかなかの迫力だ。
「プリンセス、こんなに食べないと思うよ」
「いえいえ。食べ盛りの姫は、これくらい食べないと」
そんなこと言われてもなぁと、困り顔のましろだったが、これが予想外! りんごおじさんの料理は、次々とましろのおなかに入っていってしまったのだ。
「おいしい~っ! ホテルの朝ご飯みたい!」
「一応プロなので、ホテルと比べられるのは……。まぁとにかく、おかわりもありますから、どんどん食べてくださいね」
そんな甘い言葉に乗せられて、ましろはぺろりと二人分くらいたいらげてしまった。
しかし、だからといって時間は二倍にはならない。気がつけば授業が始まる十五分前で、ましろは人生で一番全力で走るはめになってしまったのだ。
「しっ……、白雪、ましろです! よろしく……、はぁっ、お願いします!」
ぜいぜいと息を切らして自己紹介を終えたましろは、「こんなはずじゃなかったのに……」と落ちこみながら席に着いた。多分朝ご飯のカロリーは、すべて消費した気がする。
「白雪さんって、《りんごの木》の店長さんの親戚?」
朝の会が終わると、隣の席の女の子が、ため息をついていたましろに話しかけてくれた。
短い髪がよく似合う、スラッと背の高い女の子だ。なんだかかっこいい。
「りんごおじさんは、わたしのおじさんだよ」
「やっぱりーっ! あっ。あたしはキビノモモナ。よろしく」
女の子は、ノートに書いてある「吉備野桃奈」という漢字を見せながら、自己紹介してくれた。
「あたしの家、おとぎ商店街で果物屋やってんだ。白雪店長は、よく買い物に来てくれるから覚えてる」
「わたし昨日、果物屋さんのリンゴのジュース、飲んだよ! 吉備野さんのお店のリンゴかな? すっごく美味しかった」
爽やかな甘さのリンゴジュースを思い出すと、勝手に口の中がジュワッとなってしまう。また飲みたいとは思っていたが、まさか同級生のお家が果物屋さんとは驚きだ。
「うちの商品はとびっきりうまいから、当然! 白雪さんも、今度来て」
「うん、分かった! 吉備野さんも《りんごの木》に来てね。わたし、土曜と日曜はウェイトレスさんするから」
「えぇーっ! なにそれ、すごい! 絶対行くよ!」
お店に立つ予定を発表したましろだったが、吉備野さんは予想以上の反応だった。さっそく、次の日曜日にお母さんと行くと言ってくれたのだ。
これは気合いを入れて頑張らないといけない!
白雪ましろは、おとぎ小学校の転校初日にやらかしてしまった。
いきなりの遅刻だ。寝坊ではない。
「すみません。朝ご飯がおいしすぎて、いっぱい食べてたらこんな時間に……」
五年二組の教室が、朝から明るい笑いに包まれたのだが、ましろとしては不本意だ。
本当は自己紹介をビシッと決めて、クールビューティーなキャラを定着させようかと思っていたのに、いきなり大失敗だ。
それもこれも、おいしいご飯を作るりんごおじさんのせいだ。
「ましろさん、今朝は【プリンセスの朝ごはん】ですよ」と、満面の笑みでキッチンから出て来たりんごおじさんの両腕には、お皿が全部で五枚も乗っていた。
不思議なネーミングはさておいて、右にはコーンポタージュ、海藻サラダ、スクランブルエッグとカリカリベーコン。左にはロールパンとデニッシュ、そしてカットされたグレープフルーツ。リビングのテーブルはノートだらけなので、カウンターテーブルにお皿がズラリと並ぶ様子は、なかなかの迫力だ。
「プリンセス、こんなに食べないと思うよ」
「いえいえ。食べ盛りの姫は、これくらい食べないと」
そんなこと言われてもなぁと、困り顔のましろだったが、これが予想外! りんごおじさんの料理は、次々とましろのおなかに入っていってしまったのだ。
「おいしい~っ! ホテルの朝ご飯みたい!」
「一応プロなので、ホテルと比べられるのは……。まぁとにかく、おかわりもありますから、どんどん食べてくださいね」
そんな甘い言葉に乗せられて、ましろはぺろりと二人分くらいたいらげてしまった。
しかし、だからといって時間は二倍にはならない。気がつけば授業が始まる十五分前で、ましろは人生で一番全力で走るはめになってしまったのだ。
「しっ……、白雪、ましろです! よろしく……、はぁっ、お願いします!」
ぜいぜいと息を切らして自己紹介を終えたましろは、「こんなはずじゃなかったのに……」と落ちこみながら席に着いた。多分朝ご飯のカロリーは、すべて消費した気がする。
「白雪さんって、《りんごの木》の店長さんの親戚?」
朝の会が終わると、隣の席の女の子が、ため息をついていたましろに話しかけてくれた。
短い髪がよく似合う、スラッと背の高い女の子だ。なんだかかっこいい。
「りんごおじさんは、わたしのおじさんだよ」
「やっぱりーっ! あっ。あたしはキビノモモナ。よろしく」
女の子は、ノートに書いてある「吉備野桃奈」という漢字を見せながら、自己紹介してくれた。
「あたしの家、おとぎ商店街で果物屋やってんだ。白雪店長は、よく買い物に来てくれるから覚えてる」
「わたし昨日、果物屋さんのリンゴのジュース、飲んだよ! 吉備野さんのお店のリンゴかな? すっごく美味しかった」
爽やかな甘さのリンゴジュースを思い出すと、勝手に口の中がジュワッとなってしまう。また飲みたいとは思っていたが、まさか同級生のお家が果物屋さんとは驚きだ。
「うちの商品はとびっきりうまいから、当然! 白雪さんも、今度来て」
「うん、分かった! 吉備野さんも《りんごの木》に来てね。わたし、土曜と日曜はウェイトレスさんするから」
「えぇーっ! なにそれ、すごい! 絶対行くよ!」
お店に立つ予定を発表したましろだったが、吉備野さんは予想以上の反応だった。さっそく、次の日曜日にお母さんと行くと言ってくれたのだ。
これは気合いを入れて頑張らないといけない!