「りんごおじさん、お願いです! なにとぞ! なにとぞお願いします!」
「わ、分かりました」

 りんごおじさんは、ましろに圧倒される形でうなずいた。そして、少しだけ悩んでからまた口を開く。

「でも、小学生を雇うわけにはいかないので、あくまでもお手伝い、ですからね?」
「それでもいいです!」
「勉強がおろそかになってはいけませんから、お手伝いは土日の数時間です」
「勉強がんばります!」
「遊びじゃないですから、真剣にできますか?」
「もちろんです! 店長!」
「僕には敬語を使わない。いいですか?」
「うん! 分かったよ!……って、あれ?  最後のだけ、おかしくない?」

 むしろ、店長には丁寧な言葉を使うべきではないかと思ったのだが、りんごおじさんは「いいんです」と首を縦にふった。

「お客さんには敬語を使ってください。でも、僕はましろさんのおじさんですから、その方がうれしいんです」

「でも、りんごおじさんは、デスマス付けてるじゃん」
「僕はクセなので」

 ましろの不満そうな様子を見て、りんごおじさんは楽しそうに笑った。

「では、改めてよろしくお願いしますね。ましろさん」
「こちらこそ! りんごおじさん!」




 ***
 ファミリーレストラン《りんごの木》は、おとぎ商店街にある小さなお店。
 ほっこりのんびりできる、家族の絆を結ぶレストラン──。