「乙葉さん! 旦那さんもこんにちは! わぁ! まゆりちゃん会いたかったよ~っ!」

「白兎! ボクにもかき氷頼む」
「堂道! よく来たな!」


 そして、なんとテレビまで来てしまった!

「は~い、こちらシエラ! 御伽祭を生中継してま~す! めーっちゃおいしそうなかき氷発見だよ!」
「うわぁぁ! シエラちゃん! また来てくれたのっ?」
「ましろちゃん、久しぶりぃ! リピートしちゃった!」


 ここまで来ると、《りんごの木》への注目はすごかった。次から次へとお客さんがやって来る。

「あわわーっ! 忙しいよーっ!」
「あらあら。うれしい大盛況ね。これは、ボーナスがもらえちゃうのかしら?」

 ましろが忙しさに目を回していた時、人だかりの中からひょっこり現れたのは恩田さんだった。旦那さんと、五人の子どもたちもいっしょだ。

「恩田さん。ご家族のみなさんも、こんにちは。いつもお世話になっています」

 りんごおじさんはすぐにサービスでかき氷を作り始めたけれど、恩田さんは「あ、いいのいいの」と、それをストップさせた。

「しばらくの間、私が店番を代わりますよ。だから、店長はましろちゃんとお祭りを回って来て」

「えっ」と、ましろは恩田さんを見上げた。

 実は、ましろはお祭りの出店を見て回りたいと思っていたけれど、お店が忙し過ぎて言い出せなかったのだ。だから、恩田さんの心遣いが嬉しくてたまらない。

「いいんですか? ご家族で来られているのに」
「少しくらい、旦那に任せるわよ。それに、私だって、《りんごの木》の一員よ」
「恩田さん、オレは遊びに行っちゃダメっすか?」
「アリス君はダメよ。私が一人になっちゃうじゃない」

 アリス君が「ちぇー」とむくれている一方で、ましろの胸はぴょんっと弾んでいた。

「お祭り、りんごおじさんと見てきていいの?」
「では、お言葉に甘えて行きましょうか」



***
 そうして、ましろはりんごおじさんと並んで、おとぎ商店街を歩き始めた。
 人が多いけれど、はぐれないように手をつなぐのは恥ずかしい。だから、りんごおじさんのシャツをきゅっとつまんで歩いていた。

「すっごくにぎやかだね」
「そうですねぇ。観光客の人もたくさんいるようです」
「ねぇねぇ、たこ焼き半分こしよう?」
「いいですよ。おいしそうですね」