「こんにちは! いらっしゃいませ!」
「ごめん、今日は食べに来たわけじゃないんだ」
黒髪のさっぱりとしたショートヘアで、細身のパンツをかっこよく履きこなすきれいな人だ。スラッとしていて、身のこなしが王子様みたいでキラキラして見える。
そして、その人は申し訳なさそうに微笑むと、ましろの背丈まで屈んで名刺を手渡して来た。
「これ、シェフに渡してくれないかい?」
「えっ? は、はい……」
「ありがとう。よろしくね」
女の人はスクっと立ち上がると、颯爽とお店を出て行った。まるで、夏に窓を吹き抜ける風のようだ。
「ましろ。今の、お客さんじゃなかったのか?」
こちらを気にしてくれていたのか、アリス君は素早く歩いてやって来て、名刺をのぞきこむ。すると、アリス君はとても驚いた顔をした。
「マジか! 今の、小折花衣里じゃん!」
「誰?」
ましろが聞き返すと、アリス君は名刺の下に書いてあるカタカナを指で何度もなぞった。
「《テーブル・ディ・エスポワ》! 東京で一番人気のフレンチレストランの若き女オーナーシェフ!」
「わぁ! すごい人なんだね!」
「フランスの料理コンテストで三年連続で二位、去年はついに一位を取った、実力が右肩上がりのシェフなんだってさ。しかも、イケメンだっつって女性人気がすごい」
「アリス君、詳しいね」
「昨日、テレビで見た」
アリス君は、興奮した様子で名刺の裏をめくると、さらに驚いた顔をした。
「おいおい。メッセージが書いてあるぞ」
名刺の裏には、手書きでメッセージが書かれていたのだ。
『親愛なる凛悟君へ。明日の十五時、約束の場所で待っているよ。必ず君を手に入れせみせるからね』
こ、これは、ラブレターっ?
「どっ、どういうこと……っ?」
「オレに分かるわけないだろ!」
ましろとアリス君は、二人であわあわと名刺を押しつけ合った。とてもキザな文面だけれど、これは告白のためにりんごおじさんを呼び出している手紙ではないだろうか。
「いやいや、マジかよ! 小折シェフと店長が? どんな関係なんだ?」
「ねぇ! これって、勝手に見てよかったのかなっ?」
「ましろさん、アリス君。二人で何を騒いでいるんですか?」
「ごめん、今日は食べに来たわけじゃないんだ」
黒髪のさっぱりとしたショートヘアで、細身のパンツをかっこよく履きこなすきれいな人だ。スラッとしていて、身のこなしが王子様みたいでキラキラして見える。
そして、その人は申し訳なさそうに微笑むと、ましろの背丈まで屈んで名刺を手渡して来た。
「これ、シェフに渡してくれないかい?」
「えっ? は、はい……」
「ありがとう。よろしくね」
女の人はスクっと立ち上がると、颯爽とお店を出て行った。まるで、夏に窓を吹き抜ける風のようだ。
「ましろ。今の、お客さんじゃなかったのか?」
こちらを気にしてくれていたのか、アリス君は素早く歩いてやって来て、名刺をのぞきこむ。すると、アリス君はとても驚いた顔をした。
「マジか! 今の、小折花衣里じゃん!」
「誰?」
ましろが聞き返すと、アリス君は名刺の下に書いてあるカタカナを指で何度もなぞった。
「《テーブル・ディ・エスポワ》! 東京で一番人気のフレンチレストランの若き女オーナーシェフ!」
「わぁ! すごい人なんだね!」
「フランスの料理コンテストで三年連続で二位、去年はついに一位を取った、実力が右肩上がりのシェフなんだってさ。しかも、イケメンだっつって女性人気がすごい」
「アリス君、詳しいね」
「昨日、テレビで見た」
アリス君は、興奮した様子で名刺の裏をめくると、さらに驚いた顔をした。
「おいおい。メッセージが書いてあるぞ」
名刺の裏には、手書きでメッセージが書かれていたのだ。
『親愛なる凛悟君へ。明日の十五時、約束の場所で待っているよ。必ず君を手に入れせみせるからね』
こ、これは、ラブレターっ?
「どっ、どういうこと……っ?」
「オレに分かるわけないだろ!」
ましろとアリス君は、二人であわあわと名刺を押しつけ合った。とてもキザな文面だけれど、これは告白のためにりんごおじさんを呼び出している手紙ではないだろうか。
「いやいや、マジかよ! 小折シェフと店長が? どんな関係なんだ?」
「ねぇ! これって、勝手に見てよかったのかなっ?」
「ましろさん、アリス君。二人で何を騒いでいるんですか?」