「ファミリーレストラン《りんごの木》」
白雪ましろは、木でできた看板に書かれた文字を読み上げた。
ファミリーレストランといえば、いくつか有名なチェーン店が思い浮かぶのだが、ここは個人の小さな小さなお店だ。
「変なの……」と、ましろは首を傾げながら、ゆっくりとお店のドアを開いた。
すると、カランカランとドアベルが店内に鳴り響き、イスを運んでいた男の人がこちらをくるりと振り返った。
「いらっしゃいま……。おや? ましろさん」
見た目は三十歳くらい。眠たそうな目にメガネをかけていて、背が高い。そして黒色のふわふわしたくせっ毛は、ましろのそれにそっくりだった。
「こっ、こんにちは! りんごおじさん、今日からよろしくお願いします!」
ましろは、緊張しながらペコリとお辞儀した。お辞儀をすると、ポニーテールの髪の端っこが顔にかかって、少しくすぐったかった。
「連絡をくれたら、駅まで迎えに行ったのに……。僕の方こそ、よろしくお願いします」
りんごおじさんは、にこりと優しく微笑むと、赤色のエプロンを外しながらこちらにやって来た。
「家は、ここのちょっと先にあるんですよ。一緒に行きましょう。……アリス君、しばらくお留守番をお願いできますか?」
りんごおじさんが言うと、アリス君と呼ばれた高校生くらいのお兄さんが、「大丈夫っす」とお店の奥から返事をした。羨ましいくらいサラサラとしたきれいなチョコレート色の髪だ。けれど、目つきが悪くて少し怖い。
ましろはアリス君にも慌ててお辞儀をすると、自分の代わりに大きなキャリーバッグを引いてくれるりんごおじさんを追いかけて、急いでお店を出た。本当は、どんなお店なのか気になっていたけれど、仕方がない。りんごおじさんは、ましろのために仕事を中断して、マンション――ましろの新しい家へ案内してくれるのだ。これ以上、迷惑をかけるわけにはいかない。
白雪ましろは、木でできた看板に書かれた文字を読み上げた。
ファミリーレストランといえば、いくつか有名なチェーン店が思い浮かぶのだが、ここは個人の小さな小さなお店だ。
「変なの……」と、ましろは首を傾げながら、ゆっくりとお店のドアを開いた。
すると、カランカランとドアベルが店内に鳴り響き、イスを運んでいた男の人がこちらをくるりと振り返った。
「いらっしゃいま……。おや? ましろさん」
見た目は三十歳くらい。眠たそうな目にメガネをかけていて、背が高い。そして黒色のふわふわしたくせっ毛は、ましろのそれにそっくりだった。
「こっ、こんにちは! りんごおじさん、今日からよろしくお願いします!」
ましろは、緊張しながらペコリとお辞儀した。お辞儀をすると、ポニーテールの髪の端っこが顔にかかって、少しくすぐったかった。
「連絡をくれたら、駅まで迎えに行ったのに……。僕の方こそ、よろしくお願いします」
りんごおじさんは、にこりと優しく微笑むと、赤色のエプロンを外しながらこちらにやって来た。
「家は、ここのちょっと先にあるんですよ。一緒に行きましょう。……アリス君、しばらくお留守番をお願いできますか?」
りんごおじさんが言うと、アリス君と呼ばれた高校生くらいのお兄さんが、「大丈夫っす」とお店の奥から返事をした。羨ましいくらいサラサラとしたきれいなチョコレート色の髪だ。けれど、目つきが悪くて少し怖い。
ましろはアリス君にも慌ててお辞儀をすると、自分の代わりに大きなキャリーバッグを引いてくれるりんごおじさんを追いかけて、急いでお店を出た。本当は、どんなお店なのか気になっていたけれど、仕方がない。りんごおじさんは、ましろのために仕事を中断して、マンション――ましろの新しい家へ案内してくれるのだ。これ以上、迷惑をかけるわけにはいかない。