放課後のハンバーガーのチェーン店。
同じ高校の制服や、他校の制服を見に纏った学生達が多く見られる。
俺は部活が休みの悟を連れて2階の席でポテトを貪り食べていた。
ジュース、ポテト、ジュースを繰り返しながら、食べる姿は自分でもロボットのように感じる。
ふと目の前に座る悟を見ればガッツリとハンバーガーを食べていて、おまけにナゲットも頬張っていた。
運動部らしいと言えばらしいけど夕飯は大丈夫なのか。
でもそんな事を俺が言っても悟は「大丈夫!」の一点張りだろう。
ジッと悟の食べている姿を見ていると視線に気づいた悟がナゲットを俺の口に突っ込む。
「ひとまず食って忘れろ」
「アニメみたいなセリフだな」
「俺の親父のセリフだ。昔から試合に負けると決まってそう言うんだよ。今ではスルーしてるけどな」
「スルーは親父さん可哀想じゃないのか?」
「お前の父親への態度の方が可哀想に感じるぜ」
悟の言葉でナゲットを噛んでいた行動が止まる。
俺は最近父親とは会っていなかった。
作曲家として転々と場所を移動して、家に帰ってないからだ。
最後に顔を合わせたのは去年のお盆の時期。
約1年前だ。
でも家に帰って来たって俺は父親とは話さない。
俺が避けているから。
それでも悟親子のような切磋琢磨の父親と息子の関係は密かに憧れていた。
「俺はいいんだよ。それよりも明日のために話題を探して欲しい」
「話題ね〜。野球部の先輩とかと話す時は下ネタしか言わねぇからな〜」
「下ネタは絶対ダメだ」
「わかってる。下ネタ教えたのが俺だって立花とかにバレたらガチで絞められるから。ていうかさ、そんなのスマホでちょちょいのちょいじゃね?俺なんかに聞くよりもネットの方が沢山出回ってそう」
「調べるか」
「俺ドリンクおかわりしてくる〜」
俺はスマホを操作し始め、悟は席を立って1階へ降りて行った。
検索欄に【女子 話す 話題】と打ち込む。
すぐに候補に出てくるのを見て、話題に困っているのは沢山いるのだなと心の中で思った。
1番上にあるサイトを開けば話すコツや話題の繋げ方、好印象を持たせる方法などが書かれている。
【目の前あるものについて話す。
5W1Hを意識する。
オウム返しで共感をする
相手をピンポイントで褒める】
このサイトは話題というよりも話すコツだった。
ふと、俺は鈴木先輩との会話を思い浮かべる。
今日の会話は俺がほとんど喋っていた気がした。
鈴木先輩は俺の会話に受け答えするだけ。
まずそれ自体がいけなかったかもしれない。
俺の中の後悔が襲ってきた時、悟がドリンクを持ってまた席に着く。
「いいの見つかったか?」
「いや…その…」
「ふーん。……あーうめー。油物にコーラは合う!コーラ×ポテト×バーガー=最強!」
「そんなに飲んで平気なのか?」
「俺水分めっちゃ摂る人間だから。それに部活づくしで久々に放課後寄り道したからマネーは有り余ってる」
「あっそ」
1番大きなサイズのドリンクをまた飲み始めた悟を見た後、俺はスマホに視線を下げる。
情報は沢山あったが、これと言って使えそうな話題は見つからなかった。
見ては下にスクロールを繰り返す姿はまた俺をロボットにした。
「青春してんなぁ」
「その言葉保健の先生にも言われた」
「だって好きな人の為に話題探すって青春の塊だろ」
「好きな人ではない。予想だけど好きなアーティストが一緒なだけだ」
「嘘つけ。美人なんだろ?付き合えば?」
「なんで付き合うっていう考えになるんだよ。それに鈴木先輩は教室に行けないくらいだから……」
「ん?どした?」
「許可は取ったけどさ、俺が話しかけるのってもしかして迷惑?」
ポテトを食べようと伸ばした俺の手が止まった。
悟は何を言ってるか理解が出来てない様子でドリンクを飲む。
「なんで教室行けないのかはわからないけど、やっぱり対人関係だろ?人が嫌なのに俺が話しかけたらストレス溜まってしまうんじゃ…」
「んー?でも会ってくれたじゃん」
「断れなかったのかもしれない…」
「なんでよ」
「だってそんな感じだった。受身体制の返答だったし、話した感じ大人しいタイプだったから」
「ネガティブ過ぎるだろ」
ようやく動いた手がポテトを掴んで口に運ぶ。
後悔がどんどん増えていく俺に対して悟は呆れた様子で残り1つのナゲットを口に放り込んだ。
「聞けばいいだろ。直接さ」
「は?」
「先輩はそう思ってないかもしれないのに自分の勝手な想像や都合で塗り替えるのは酷くねぇと思わない?もし迷惑だったらその時はその時だ。迷惑にならない作戦を立てればいい」
真剣な声で言った悟の言葉は重みがあって俺の考え方が変わっていく。
確かに自分の一時的な感情で否定するのは先輩を否定するのと同じだ。
それを友達の悟に言われたからこそ、俺の中に響き渡った。
「ああ、サンキュー」
「ん。…そろそろ出るか!そのポテト貰うぜ。相談料」
「あっちょっ」
真剣な声は一瞬だったようで悟はいつもの調子で俺のポテトをかっさらって行った。
モグモグしながら片付けを始める悟にため息をついて、俺はまたスマホの画面を見る。
話題や話すコツが開かれたサイトを全て消して俺も片付けを始めた。
同じ高校の制服や、他校の制服を見に纏った学生達が多く見られる。
俺は部活が休みの悟を連れて2階の席でポテトを貪り食べていた。
ジュース、ポテト、ジュースを繰り返しながら、食べる姿は自分でもロボットのように感じる。
ふと目の前に座る悟を見ればガッツリとハンバーガーを食べていて、おまけにナゲットも頬張っていた。
運動部らしいと言えばらしいけど夕飯は大丈夫なのか。
でもそんな事を俺が言っても悟は「大丈夫!」の一点張りだろう。
ジッと悟の食べている姿を見ていると視線に気づいた悟がナゲットを俺の口に突っ込む。
「ひとまず食って忘れろ」
「アニメみたいなセリフだな」
「俺の親父のセリフだ。昔から試合に負けると決まってそう言うんだよ。今ではスルーしてるけどな」
「スルーは親父さん可哀想じゃないのか?」
「お前の父親への態度の方が可哀想に感じるぜ」
悟の言葉でナゲットを噛んでいた行動が止まる。
俺は最近父親とは会っていなかった。
作曲家として転々と場所を移動して、家に帰ってないからだ。
最後に顔を合わせたのは去年のお盆の時期。
約1年前だ。
でも家に帰って来たって俺は父親とは話さない。
俺が避けているから。
それでも悟親子のような切磋琢磨の父親と息子の関係は密かに憧れていた。
「俺はいいんだよ。それよりも明日のために話題を探して欲しい」
「話題ね〜。野球部の先輩とかと話す時は下ネタしか言わねぇからな〜」
「下ネタは絶対ダメだ」
「わかってる。下ネタ教えたのが俺だって立花とかにバレたらガチで絞められるから。ていうかさ、そんなのスマホでちょちょいのちょいじゃね?俺なんかに聞くよりもネットの方が沢山出回ってそう」
「調べるか」
「俺ドリンクおかわりしてくる〜」
俺はスマホを操作し始め、悟は席を立って1階へ降りて行った。
検索欄に【女子 話す 話題】と打ち込む。
すぐに候補に出てくるのを見て、話題に困っているのは沢山いるのだなと心の中で思った。
1番上にあるサイトを開けば話すコツや話題の繋げ方、好印象を持たせる方法などが書かれている。
【目の前あるものについて話す。
5W1Hを意識する。
オウム返しで共感をする
相手をピンポイントで褒める】
このサイトは話題というよりも話すコツだった。
ふと、俺は鈴木先輩との会話を思い浮かべる。
今日の会話は俺がほとんど喋っていた気がした。
鈴木先輩は俺の会話に受け答えするだけ。
まずそれ自体がいけなかったかもしれない。
俺の中の後悔が襲ってきた時、悟がドリンクを持ってまた席に着く。
「いいの見つかったか?」
「いや…その…」
「ふーん。……あーうめー。油物にコーラは合う!コーラ×ポテト×バーガー=最強!」
「そんなに飲んで平気なのか?」
「俺水分めっちゃ摂る人間だから。それに部活づくしで久々に放課後寄り道したからマネーは有り余ってる」
「あっそ」
1番大きなサイズのドリンクをまた飲み始めた悟を見た後、俺はスマホに視線を下げる。
情報は沢山あったが、これと言って使えそうな話題は見つからなかった。
見ては下にスクロールを繰り返す姿はまた俺をロボットにした。
「青春してんなぁ」
「その言葉保健の先生にも言われた」
「だって好きな人の為に話題探すって青春の塊だろ」
「好きな人ではない。予想だけど好きなアーティストが一緒なだけだ」
「嘘つけ。美人なんだろ?付き合えば?」
「なんで付き合うっていう考えになるんだよ。それに鈴木先輩は教室に行けないくらいだから……」
「ん?どした?」
「許可は取ったけどさ、俺が話しかけるのってもしかして迷惑?」
ポテトを食べようと伸ばした俺の手が止まった。
悟は何を言ってるか理解が出来てない様子でドリンクを飲む。
「なんで教室行けないのかはわからないけど、やっぱり対人関係だろ?人が嫌なのに俺が話しかけたらストレス溜まってしまうんじゃ…」
「んー?でも会ってくれたじゃん」
「断れなかったのかもしれない…」
「なんでよ」
「だってそんな感じだった。受身体制の返答だったし、話した感じ大人しいタイプだったから」
「ネガティブ過ぎるだろ」
ようやく動いた手がポテトを掴んで口に運ぶ。
後悔がどんどん増えていく俺に対して悟は呆れた様子で残り1つのナゲットを口に放り込んだ。
「聞けばいいだろ。直接さ」
「は?」
「先輩はそう思ってないかもしれないのに自分の勝手な想像や都合で塗り替えるのは酷くねぇと思わない?もし迷惑だったらその時はその時だ。迷惑にならない作戦を立てればいい」
真剣な声で言った悟の言葉は重みがあって俺の考え方が変わっていく。
確かに自分の一時的な感情で否定するのは先輩を否定するのと同じだ。
それを友達の悟に言われたからこそ、俺の中に響き渡った。
「ああ、サンキュー」
「ん。…そろそろ出るか!そのポテト貰うぜ。相談料」
「あっちょっ」
真剣な声は一瞬だったようで悟はいつもの調子で俺のポテトをかっさらって行った。
モグモグしながら片付けを始める悟にため息をついて、俺はまたスマホの画面を見る。
話題や話すコツが開かれたサイトを全て消して俺も片付けを始めた。