「かったり〜！昼休み潰してトレーニングなんてふざけんなよ」
「甲子園の代表決める大会があるんだろ？顧問気合い入ってるな」
「どうせ勝てねぇよ！それなのにトレーニングって…」
「ほら、早くしないと怒られるぞ」
「へいへい。じゃあな、昼休みぼっちで寂しい思いしろよ！」
「はいはい」
昼休みになると教室内は朝よりも騒がしくなる。
弁当を食べる人や友達と喋り始める人。
他には静かに本を読んでいる人もいると思うが、このクラスにはそんな人は居なかった。
みんなグループを作ってそれぞれの輪に入っていく。
俺は悟が部活の方に行ってしまったのでこのクラス内ではぼっちになってしまった。
仕方なく俺は席を立ち教室を出ると、1年生のクラスの方へ向かって行った。
赤木高校は3階建てで階数の数字ごとに学年の教室がある。
つまり俺の2年3組は2階。
1年の領域に入るには1階へ降りる必要がある。
目的地の道中、1年の女子達にチラチラと見られてやはり2年は目立つなと感じた。
3年だともっと特別扱いされるのだろうか。
そんなことを考えていると1年1組の教室の扉の前に着いていた。
「失礼しまーす。光流いますかー？」
「あっ！ここにいます！」
適当な挨拶、適当な言葉の伸ばし方で教室に入ると当然半数が俺を見る。
見られるのはあまり得意じゃないからやめろとも言いたいけど、後輩をいじめたら先生に何言われるかわからない。
すると1番端の席から人を掻き分けてくる低身長男子が俺の元へとやってくる。
「ヒーくんどうしたの？」
「弁当一緒に食べね？」
「うん！いいよ！今持ってくるね」
俺の幼馴染、高橋光流（たかはし みつる）は嬉しそうに弁当を取りに行った。
家が近くて小さい頃からよく遊んでいる光流。
俺が中学生になった頃にはピアノを教えていた時期もあった。
素直で犬みたいな性格の光流は今年、俺と同じ高校に入ってきてたまにすれ違うと話しかけることもある。
「ヒーくんお待たせ！弁当食べる前に保健室行っていい？」
「体調悪いのか？」
「さっきノートで指を…ね」
「なるほど。それじゃあ保健室行くか」
「うん！」
大きく頷いた光流は俺の隣に来て一緒に保健室へ歩いていく。
「高校慣れた？」「おばさんは元気？」と俺が質問すると嫌な顔せずに元気に答えてくれた。
年下気質の光流は俺にとって血の繋がらない可愛い弟と思っている。
実際の血の繋がる弟は可愛くなんてない。
むしろ嫌いに属する。
光流が弟だったらきっと楽しかったのだろうなと想像することもしばしばあった。
「僕、保健室初めて行くよ」
「元気だもんな」
「いっぱいご飯食べてるからね！」
「今でも大盛り2杯食べてるのか？」
「勿論！最近は2杯半食べてるよ！」
「よく太らないな…。あ、そこ保健室」
「意外と近い！」
「同じ階だからな」
光流を先頭に保健室の扉を叩いて入っていく。
「失礼します！」
「失礼しま…」
いつも保健の先生が座っている椅子には誰も居なかった。
光流はキョロキョロ周りを見ている。
しかし俺は一点に目を止めていた。
「あの、すみません。保健の先生ってどこにいるかわかりますか？」
「たぶん職員室…です」
「ありがとうございます！ヒーくん、僕ちょっと職員室行って呼んでくるね」
光流は風のように俺の横を通って保健室を出て行った。
俺は光流とは逆に保健室の奥にある丸テーブルに近づく。
「あの、先生は職員室に…」
「昨日カラオケ店の前で歌ってましたよね？」
「え？」
「amaの曲を歌ってる途中に邪魔した男です。間違ってたらすみません」
「あっ…！昨日、」
「やっぱりそうですか！まさか同じ学校だったなんて！俺は2年3組の九音ヒロです。ネクタイの色からして3年生ですか？」
「…はい」
控えめに応える人は昨日母親に頼まれた買い物の途中に聞こえた歌声の持ち主だった。
鎖骨くらいまである黒髪。
少し高めの身長。
覚えていたのはそれだけだったが、保健室に入ってひと目見た時に謎の確信を得てしまった。
amaの曲を知っているという共通点があるだけで俺はテンションが上がって話しかけてしまう。
「amaの曲好きなんですか？」
「まぁ、はい」
「俺も好きなんです。でも先輩の歌聴くまで離れていましたけど」
「そうなんですね」
「いつもあのカラオケで…」
「ヒーくんお待たせ！職員室に絆創膏があったからそっちで貼ってもらった！」
「あ、光流」
「ヒーくんの知り合い？」
「知り合いというか、、あっそうだ先輩も一緒にお昼どうですか？」
「私はちょっと、保健の先生に用事があるので…」
「そうですか。それじゃあ明日…」
「ヒーくん早くしないと昼休み終わっちゃうよ？」
「ああ、そっか。先輩失礼します」
「はい」
俺は先輩に挨拶した後光流を連れて保健室から出て行く。
先輩の名前も聞けなかったし、明日一緒にお昼食べようと誘うことも出来なかったが、同じ学校と言うことを知れた満足感は凄かった。
「あの人3年生？綺麗な人だね」
「そうだな。と言っても喋ったのは今日が初めてだけど」
「え？そうなの？凄く仲良さそうだったじゃん！彼女さんと思ったよ！」
「ちげーよ。とりあえず昼は体育館で食べるか？」
「あ、そうだね！お腹すいたよ〜」
光流は早歩きし始めて俺もそれに着いて行く。
それでも頭の中はama好きの先輩の事で埋め尽くされていた。
もしかしたら、3年生の教室に行けばあの人の名前がわかるかもしれない。
密かに俺は作戦を立てながら光流と体育館に向かって早歩きをした。
「甲子園の代表決める大会があるんだろ？顧問気合い入ってるな」
「どうせ勝てねぇよ！それなのにトレーニングって…」
「ほら、早くしないと怒られるぞ」
「へいへい。じゃあな、昼休みぼっちで寂しい思いしろよ！」
「はいはい」
昼休みになると教室内は朝よりも騒がしくなる。
弁当を食べる人や友達と喋り始める人。
他には静かに本を読んでいる人もいると思うが、このクラスにはそんな人は居なかった。
みんなグループを作ってそれぞれの輪に入っていく。
俺は悟が部活の方に行ってしまったのでこのクラス内ではぼっちになってしまった。
仕方なく俺は席を立ち教室を出ると、1年生のクラスの方へ向かって行った。
赤木高校は3階建てで階数の数字ごとに学年の教室がある。
つまり俺の2年3組は2階。
1年の領域に入るには1階へ降りる必要がある。
目的地の道中、1年の女子達にチラチラと見られてやはり2年は目立つなと感じた。
3年だともっと特別扱いされるのだろうか。
そんなことを考えていると1年1組の教室の扉の前に着いていた。
「失礼しまーす。光流いますかー？」
「あっ！ここにいます！」
適当な挨拶、適当な言葉の伸ばし方で教室に入ると当然半数が俺を見る。
見られるのはあまり得意じゃないからやめろとも言いたいけど、後輩をいじめたら先生に何言われるかわからない。
すると1番端の席から人を掻き分けてくる低身長男子が俺の元へとやってくる。
「ヒーくんどうしたの？」
「弁当一緒に食べね？」
「うん！いいよ！今持ってくるね」
俺の幼馴染、高橋光流（たかはし みつる）は嬉しそうに弁当を取りに行った。
家が近くて小さい頃からよく遊んでいる光流。
俺が中学生になった頃にはピアノを教えていた時期もあった。
素直で犬みたいな性格の光流は今年、俺と同じ高校に入ってきてたまにすれ違うと話しかけることもある。
「ヒーくんお待たせ！弁当食べる前に保健室行っていい？」
「体調悪いのか？」
「さっきノートで指を…ね」
「なるほど。それじゃあ保健室行くか」
「うん！」
大きく頷いた光流は俺の隣に来て一緒に保健室へ歩いていく。
「高校慣れた？」「おばさんは元気？」と俺が質問すると嫌な顔せずに元気に答えてくれた。
年下気質の光流は俺にとって血の繋がらない可愛い弟と思っている。
実際の血の繋がる弟は可愛くなんてない。
むしろ嫌いに属する。
光流が弟だったらきっと楽しかったのだろうなと想像することもしばしばあった。
「僕、保健室初めて行くよ」
「元気だもんな」
「いっぱいご飯食べてるからね！」
「今でも大盛り2杯食べてるのか？」
「勿論！最近は2杯半食べてるよ！」
「よく太らないな…。あ、そこ保健室」
「意外と近い！」
「同じ階だからな」
光流を先頭に保健室の扉を叩いて入っていく。
「失礼します！」
「失礼しま…」
いつも保健の先生が座っている椅子には誰も居なかった。
光流はキョロキョロ周りを見ている。
しかし俺は一点に目を止めていた。
「あの、すみません。保健の先生ってどこにいるかわかりますか？」
「たぶん職員室…です」
「ありがとうございます！ヒーくん、僕ちょっと職員室行って呼んでくるね」
光流は風のように俺の横を通って保健室を出て行った。
俺は光流とは逆に保健室の奥にある丸テーブルに近づく。
「あの、先生は職員室に…」
「昨日カラオケ店の前で歌ってましたよね？」
「え？」
「amaの曲を歌ってる途中に邪魔した男です。間違ってたらすみません」
「あっ…！昨日、」
「やっぱりそうですか！まさか同じ学校だったなんて！俺は2年3組の九音ヒロです。ネクタイの色からして3年生ですか？」
「…はい」
控えめに応える人は昨日母親に頼まれた買い物の途中に聞こえた歌声の持ち主だった。
鎖骨くらいまである黒髪。
少し高めの身長。
覚えていたのはそれだけだったが、保健室に入ってひと目見た時に謎の確信を得てしまった。
amaの曲を知っているという共通点があるだけで俺はテンションが上がって話しかけてしまう。
「amaの曲好きなんですか？」
「まぁ、はい」
「俺も好きなんです。でも先輩の歌聴くまで離れていましたけど」
「そうなんですね」
「いつもあのカラオケで…」
「ヒーくんお待たせ！職員室に絆創膏があったからそっちで貼ってもらった！」
「あ、光流」
「ヒーくんの知り合い？」
「知り合いというか、、あっそうだ先輩も一緒にお昼どうですか？」
「私はちょっと、保健の先生に用事があるので…」
「そうですか。それじゃあ明日…」
「ヒーくん早くしないと昼休み終わっちゃうよ？」
「ああ、そっか。先輩失礼します」
「はい」
俺は先輩に挨拶した後光流を連れて保健室から出て行く。
先輩の名前も聞けなかったし、明日一緒にお昼食べようと誘うことも出来なかったが、同じ学校と言うことを知れた満足感は凄かった。
「あの人3年生？綺麗な人だね」
「そうだな。と言っても喋ったのは今日が初めてだけど」
「え？そうなの？凄く仲良さそうだったじゃん！彼女さんと思ったよ！」
「ちげーよ。とりあえず昼は体育館で食べるか？」
「あ、そうだね！お腹すいたよ〜」
光流は早歩きし始めて俺もそれに着いて行く。
それでも頭の中はama好きの先輩の事で埋め尽くされていた。
もしかしたら、3年生の教室に行けばあの人の名前がわかるかもしれない。
密かに俺は作戦を立てながら光流と体育館に向かって早歩きをした。
