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大樹は以外とキス魔なのかもしれない。


付き合い始めてからデートはまだしていないのに、キスだけは頻繁にしている。


そんなことを考えるとなかなか寝付けなくなってしまって、萌は何度もベッドの中で寝返りをうった。


そして翌日。


その日も特に体調に異変を感じることなく学校へ登校することができていた。


それは嬉しいことだったけれど、昨日から始まった風当たりの強さはまた続いていた。


教室へ入ると萌にむけてクスクスと笑い声が起こる。


挨拶をしても誰も返してくれなくなり、休憩時間中に会話する相手がいなくなった。


その変化は萌の胸の中にトゲを突き刺していく。


どうすればいいんだろう。


希に謝ろうかとも考えたけれど、自分は悪いことをしているわけじゃない。


ただ人を初めて好きになっただけなんだ。


それを理解してもらうことが難しいことだということも、萌は理解していた。


とにかく、この荒波がすぐに終わるのを待つしか無い。


クラス全員が自分の白い目を向けるようになった今、萌にできることはなにもなかったのだった。