余命宣告された後の患者はもっと、荒々しくて悲壮感に満ちているものだと思っていたけれど、大樹がいてくれるおかげで萌の心は比較的安定していた。


《萌:私、恋愛してもいいのかな?》


気がつくとそんなメッセージを大樹へ送っていた。


ハッと気がついて取り消そうとしたが遅く、すでに既読がついている。


《大樹:そんなの、していいに決まってるだろ》


なにも知らない大樹からの返信。


それなのに、その一言が胸に突き刺さった気がした。


していいに決まってるだろ。


それは萌を前に進ませるための一言になった。


自然と涙が出てきて止まらない。


こんな自分でも恋愛していいのだと、大樹は簡単に認めてくれた。


もちろん、それは萌の病気について知らないからだとわかっていたけれど、それでも萌は嬉しかった。


泣きながらスマホを胸の前で抱きしめて、何度かしゃくりあげる。


それから手の甲で涙を拭って、空を見上げた。


空はあいかわらすとても綺麗で、まるで夢を見ているようだった。


《萌:ありがとう。私も大樹のことが好きです》


萌はメッセージを送り、もう1度空を見上げたのだった。