死ぬ前に好きな人と付き合ってみたいという欲望が湧き上がってきそうで怖かった。


そんなことを考えていると何度寝返りを打っても全く寝付ける気配がなくて、萌は仕方なく目を開けた。


病室は真っ暗で、窓にはカーテンがしかれている。


そっと音を立てないようにベッドから抜け出してカーテンを開ける。


梅雨時とは思えないほどよく晴れた夜で、満天の星空が浮かんでいる。


思わず「綺麗」と呟いて微笑む。


こんなに綺麗な星空を独り占めするなんてもったいないような気分になって、サイドテーブルのスマホに手が伸びる。


誰かに伝えたい。


両親はもう寝ただろうか?


友達はまだ起きてるかな?


考えながらスマホを操作していると、読まないようにしていた大樹からのメッセージを開いてしまった。


あっと思ってももう遅い。


その文章は目に飛び込んでいた。


《大樹:倒れたことを気にしてるのか? それなら、そんなこと気にしなくていい》


《大樹:俺は萌のことが好きだ! 体の弱さなんて関係ない!》


《大樹:萌と付き合うことができないと、今度は俺が倒れそうだ》