最近の大樹はスポーツ科で大活躍らしく、女子生徒からの人気も急上昇していた。


「大樹が隣にいると私が有名人になった気分になる」


おどけてそう言うと、大樹は首をかしげて「なんだそれ」と呟いた。


本当に自分の人気を知らないでいるのかもしれない。


そう思い、内心大樹に告白しなかったことに安堵していた。


もし告白していたら、そしてその後に余命宣告を受けていたら。


大樹はきっと萌のことを気にして恋愛どころではなかったのではないかと思う。


そこまで考えて苦笑いを浮かべる。


今のじゃまるで両思いになることが前提とされている空想だ。


これだけ人気がある大樹が、自分に向いてくれるなんてありえないのに。


「ありがとう。ここで大丈夫だから」


1階までおりてきて保健室の表札が見えたところで足を止めた。


もうすぐ次の授業が始まるから、大樹は早く教室へ戻らないといけない。


「大丈夫か?」


「大丈夫だってば」


笑顔を向けて大樹に背を向けた、その時だった。