☆☆☆
萌の葬儀には結婚式の写真が使われて、詰問客たちの涙を誘った。
けれど写真の中の萌は本当に幸せそうで、大樹の涙はひっこんでしまった。
こんなに幸せな萌を前にしたら、もう泣くことはできなかった。
「あのお守りは?」
不意に参列者から声をかけられて振り向くと、そこには兄が立っていた。
「びっくりした。来てたのか」
「お前のことが心配でな」
神出鬼没な兄に驚きながらもポケットの中を確認する。
「あれ? お守りがない」
いつでもそこに入れておいたはずのお守りが手に触れなくて、大樹は他のポケットもさがしてみた。
しかし、やはりお守りはどこにもなかった。
それを見ていた兄はホッとしたように表情をやらわげた。
「役目を終えて消えたんだな」
「そっか……」
萌は死んだ。
自分の願いも消えたのだ。
「でもさ、俺よかったと思ってるんだ」
大樹の言葉に兄は真顔に戻る。
「確かに神の領域で、人間の俺がやっちゃいけないことだったかもしれない。だけど、そのおかげで萌はあんな笑顔になれたんだと思うんだ」
遺影の萌を見つめてそっと微笑む。
「そうか。それならきっと、それが正解なんだろう」
兄はそう言い、大樹の肩を力強く叩いた。
これから先、力を得たときのことを後悔する日が来るかもしれない。
そうなったとしても、今のこの瞬間だけは間違っていなかったのだと胸をはれる。
萌が幸せだったのだと信じて……。
END
萌の葬儀には結婚式の写真が使われて、詰問客たちの涙を誘った。
けれど写真の中の萌は本当に幸せそうで、大樹の涙はひっこんでしまった。
こんなに幸せな萌を前にしたら、もう泣くことはできなかった。
「あのお守りは?」
不意に参列者から声をかけられて振り向くと、そこには兄が立っていた。
「びっくりした。来てたのか」
「お前のことが心配でな」
神出鬼没な兄に驚きながらもポケットの中を確認する。
「あれ? お守りがない」
いつでもそこに入れておいたはずのお守りが手に触れなくて、大樹は他のポケットもさがしてみた。
しかし、やはりお守りはどこにもなかった。
それを見ていた兄はホッとしたように表情をやらわげた。
「役目を終えて消えたんだな」
「そっか……」
萌は死んだ。
自分の願いも消えたのだ。
「でもさ、俺よかったと思ってるんだ」
大樹の言葉に兄は真顔に戻る。
「確かに神の領域で、人間の俺がやっちゃいけないことだったかもしれない。だけど、そのおかげで萌はあんな笑顔になれたんだと思うんだ」
遺影の萌を見つめてそっと微笑む。
「そうか。それならきっと、それが正解なんだろう」
兄はそう言い、大樹の肩を力強く叩いた。
これから先、力を得たときのことを後悔する日が来るかもしれない。
そうなったとしても、今のこの瞬間だけは間違っていなかったのだと胸をはれる。
萌が幸せだったのだと信じて……。
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