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例えば本当に大樹のお嫁さんになることができたら?


大樹と出会って2週間が過ぎた頃、萌はぼんやりとそんなことを考えるようになっていた。


まだ自分の気持を相手に伝えたわけでもないけれど、萌の気持ちは完全に大樹に向いていた。


「きっと私は世界一幸せなお嫁さんになれる」


自室でそうつぶやき、クローゼットから白いワンピースを取り出して鏡の前で自分の体に当ててみた。


これは豪華はウエディングドレスで、隣にはタキシード姿の大樹が立っている。


頭の中で想像を働かせると、鏡の中に本物のふたりが映し出される。


ふたりは幸せそうに手をつなぎ合い、みんなに祝福をされながら歩いている。


頭上から降り注ぐのはライスシャワーでバラバラと音を立てて地面に落下していく。


「これから先の生活が楽しみね」


つい口に出して言ったとき、部屋のドアが開かれて母親が顔をのぞかせた。


「生活ってなに?」


怪訝そうな顔でそう聞かれてワンピースをベッドの上へと投げ出した。


「ちょっと、勝手にドアを開けないでよ!」


「何度もノックしたでしょう。まぁた変な妄想してたの?」