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大樹と希が用意をしたのは小さな小さな結婚式会場だった。


病院側に無理を言って談話室をその会場として使わせてもらえることになった。


談話室の真ん中に赤い絨毯をしき、その左右にイスを置いた。


ステージとなる背景には十字架を掲げて、希が生花を飾り付けした。


ここに参加するのは萌の両親と、病院の関係者、そして希だけだった。


他の人たちを集める時間はなかった。


それでも、自分たちはここで祝福を受けて夫婦になるんだ。


別の部屋でタキシード姿になった大樹は萌の病室をノックした。


自分でここまで準備したと言ってもさすがに緊張してきた。


「はい」


中から萌の声が聞こえてくる。


今日も調子が良さそうな声でひとまず安心した。


「萌、入っていいか?」


「うん」


照れくさそうな返事を聞いてからドアを開けた。


その瞬間窓から差し込んでいる光で眩しくて萌の姿が見えなくなった。


けれどそれは光のせいではなく、病室の真ん中に車椅子に座っている萌の姿が眩しかったからだった。


純白のウエディングドレスに身を包んだ萌は照れくさそうに微笑んでいる。


綺麗だ……。


素直にそう感じて、息がつまる。


「タキシード似合うね」