そう言われて見てみれば人物の輪郭が自分に似ている気がする。


だとしたら、この服装は……。


「萌の夢はお嫁さんになることだから」


希が隣で呟いた。


描かれている人物の頭上には白い鳩が飛び、祝福の鐘が鳴っている。


これは自分と萌の結婚式……?


そう気がついた瞬間胸の奥が熱くなった。


萌はお嫁さんになるという夢を捨ててはいなかった。


今でもきっとその夢を見続けているんだろう。


思わず涙がこみ上げてきそうになって、あわてて目の奥に力をこめて引っ込める。


こんなところで泣いたら、萌の母親に申し訳ない。


「絵を見せていただいてありがとうございます。この絵を見ることができて、本当によかったです」


その後萌の家を後にした大樹は真剣な表情でなにかを考え込んでいた。


そしてしばらく歩いたあと「希、お前に頼みがある」と口火を切った。


希は覚悟していたように頷く。


「1度だけ俺とキスをしてほしい。1日分の命を萌にあげたいんだ……」