帰宅した大樹はそのまま自室のベッドに寝転がっていたが、全く眠気は襲ってこなかった。


他の子とキスしていた理由は理解してもらえたけれど、萌は喜ばなかった。


他の子たちを傷つけていると、不安そうな表情をしていた。


確かに、自分の行動ひとつで誰かを傷つけている自覚はあった


そのため学校内での大樹の評価は下がっていき、最低男と位置付けされるようになった。


友人の厚からはなにかあったのではないかと心配され、言い訳するのに一苦労している。


それでもキスをやめるつもりはなかった。


萌のためなら自分がどうなろうと気にならなかった。


そう、思ってきたのに……。


窓から差し込む太陽が完全に沈んでしまっても大樹は部屋から出なかった。


階下から何度か両親が声をかけてきたけれど、全部無視した。


食欲なんてなかったし、なにもしたくなかった。


自分の力を萌に拒絶されてしまった今、自分にできることがなんなのかわからなくなっていた。


「でも、間違ってたなんて思わない……」


天井を見上げてそうつぶやく。


萌がいっときでも元気になって学校に来ることができていたのは事実なんだ。


この力がなければきっと、それもかなわかっただろう。


結局自分は苦しんで苦しんでどうするか決めるしかなさそうだった。


それでも時間は刻一刻と過ぎていく。


萌のタイムリミットまでのカウントダウンはとっくに始まっていたのだった。