あのときにはすでに末期になっていたんだから。


だから萌は希を攻める気にはなれなかった。


自分は希の一番大切な人を奪ってしまったのだから。


「本当にごめんなさい!」


「大丈夫だよ希。あのときに希がどう動いたて、私の寿命は変わらなかった」


萌の言葉に希が泣きそうになり、唇をかみしめた。


自分のしたことは許されることじゃないのに、萌は攻めようともしない。


いっそ被弾された方が安心できたかもしれない。


「今まで言えなくて苦しかったでしょう?」


萌が希の手を握りしめる。


希は左右に強く首を振った。


罪悪感は常に胸の中にあった。


だけど余命宣告を受けていた萌に比べれば、こんなの苦しみのうちにはいらない。


「とにかく、これからも萌と一緒にいたい。だから、許してほしい」


気を取り直したように言ったのは大樹だ。


しかし萌はふくざつそうな表情を浮かべた。


「大樹の力は信じるよ。だけど、その力を使うためには他の子を傷つけることになるんだよね?」


大樹とキスした子の中には、大樹のことが本気で好きだった子が沢山いるはずだ。


そんな子を騙してキスをして、命を1日もらう。


そんなこと、許されることじゃなかった。