「萌が学校で最初に倒れたのって、美術室だったんだよね?」


「そうだよ。部活で少し遅くまで残ってたの。たぶん、疲れが溜まってたんだと思う」


萌はそのときのことを思い出しながら頷いた。


あのときは部室に萌しかいなくて、本当に心細かった。


けれど意識がなくなる寸前に誰かが部室に入ってきたような気配がしていた。


あれは先生だったんだろうか?


萌がそう思ったとき、青ざめた希が顔を上げた。


「私……あそこで萌が倒れているのを見てるの」


「え……?」


予想外の言葉に萌は目を見開いたまま動きを止めた。


「それ、どういうことだよ」


言ったのは大樹だった。


少し目がつり上がっていて、希を睨みつけている。


「美術部に忘れ物をして取りに戻ったとき、萌が倒れているのを見たの。誰か呼ばなきゃって思った。でも……私っ!」


そのときなにもできずに逃げ出した。


そんな大きな病気だとは思っていなかったし、大樹のこともあって萌にはいい印象がなくなっていた。


「お前、そんなことをしたのか!」


「大樹、私は気にしないから」


怒鳴る大樹を萌がたしなめる。


あの場所に希がいたことは驚いたけれど、希が早く対処してくれていたところで萌の病気は変わらない。