それは萌が捨てた手紙を大樹が読んでしまった日まで遡る。


手紙を読んだ大樹はそれが本当のことだとは信じられなかった。


だって萌はとても元気そうに見えたし、今日もちゃんと登校してきていた。


そんな萌が余命半年だなんて……。


だけど、萌が希に嘘をつく理由がない。


嘘をつくにしても内容が内容だった。


これはきっと本当のことなんだ。


そう理解した大樹はすぐに帰宅して、兄の部屋に向かった。


医大に通っている兄の部屋には大量の書籍で溢れ返っている。


その中からがん医療についての本を引っ張り出して読み始めた。


余命宣告を受けた患者が長生きをしたことはないのか。


がん治療とはどんなものがあるのか。


わからないなりに一生懸命に本を読み勧めていった。


その結果。


若いがん患者は進行が早く、亡くなる可能性が高いことがわかった。


そして萌のがんも同じで、弱ってきたらあっという間に進行することがわかった。


調べれば調べるほどに絶望が襲ってくる。


自分にできることはなにもないのだと、本の中の説明は知らしめてくるばかりだった。


そこで大樹は次にスマホを取り出した。


医学のことは自分ではどうにもできない。


それなら、もっと他の方法で萌を救うことができないか……。


考えた結果、大樹の目に飛び込んできた記事は信じられないものだった。


《どんな願いも叶えてくれる神社》


そんなもの、普段なら絶対に信じなかった。


鼻で笑って、厚と笑いのネタにして終わるくらいなものだった。


けれどこのときの大樹は藁にもすがる思いでその記事を読みふけってしまったのだ。