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大樹と会わなくなって数日が経過したころ、萌は自分の体の異変に気がついていた。


いつも平気な学校までの行き帰りに息が切れて、途中で休憩しないといけなくなった。


一度咳き込み始めたら止まらなくなる。


胸の痛みを感じる。


それは余命を宣告される前に感じていた不調そのもので、それが日に日に悪化していくようなのだ。


いくら担当医から奇跡のようだと言われても、病魔は萌の体から去ってはいなかったのだと突きつけられる。


そしてある日の朝。


ついに病魔は萌に牙をむいた。


ベッドの上で目を覚ました瞬間、萌は自分の体がいつも以上に調子が悪いことに気がついた。


咳が出てとまらない。


呼吸が苦しい。


起き上がろうとしても体に力が入らない。


全身から血の気が引いていき、苦しさのあまり涙がにじむ。


あまりにも苦しい呼吸を繰り返しているので、両親がすぐに気がついて駆けつけてくれた。


常備薬を飲んでしばらく横になっていても様態は一向によくならず、父親の車で病院へ向かうことになってしまった。


その時間が異様なほどに長く感じられて、このまま死んでしまうんじゃないかという恐怖心に襲われた。


それでもどうにか運び込まれた萌を見て、担当医は息を飲んだ。


「すぐに処置をします」


早口に両親へ向けてそう伝え、萌はベッドに寝かされて運ばれていったのだった。