大樹の浮気グセについてはすぐに学校中に広まることとなった。


同じ学校で不特定多数の女子生徒とキスをしていたのだから、当然の結果だった。


萌は一度はストレスで倒れそうになってしまったが、どうにか授業に参加することができていた。


大樹とは、もう一週間以上まともに顔を合わせていない。


「やっぱり、別れようと思うんだ」


休憩時間中、萌は希にそう伝えた。


せっかく希のおかげでつながった縁だけれど、もうこれ以上は続けることはできない。


イケメンで有名だった大樹は、今は最低男としてみんなから白い目で見られている。


その矛先が時折萌の方へ飛んできた。


大樹と別れろ。


淫乱女。


大樹にキスだけされた女子生徒たちは影で萌をそんな風に呼んだ。


「うん。それがいいかもしれないね」


萌の現状をよく知っている希は苦い顔をしながらも頷いた。


これ以上傷つく萌を見ていたくない。


なにより、大樹の浮気が次々と発覚し始めた頃から萌の顔色は明らかに悪くなっているのだ。


きっとストレスを溜め込んでいるに違いない。


「直接話しをしに行くの?」


希の質問に萌は左右に首を振った。


面と向かって別れを切り出す勇気はない。


大樹の顔を見たら、許してしまいそうになるかもしれない。


「メッセージで伝えることにする」


「そっか。それでいいのかもしれないね」


萌は小さく頷いたのだった。