☆☆☆

教室を飛び出して萌は女子トイレにかけこんで泣き始めた。


泣きたくないと思えば思うほど我慢ができなくて、声を上げて泣く。


大樹がキスをしたいたことは事実だった。


その上言い訳をしようとしていた。


そのことが萌にはショックだった。


言い訳なんてせずに、素直に謝ってほしかった。


そうすればまだ少しでも大樹との関係を続けたいと思えたかもしれないのに……。


「なに泣いてんの?」


そんな声が聞こえてきて息を飲んで顔を上げると、見たことのない女子生徒が立っていた。


その子は目を吊り上げて萌を睨みつけている。


突然の闖入者に驚き、萌の涙は一瞬ひっこんでしまった。


「泣きたいのはこっちなんだけど?」


「え?」


状況が理解できずに首をかしげる。


すると女子生徒は大樹の名前を出してきたのだ。


「どうしてあんたがまだ大樹くんと付き合ってるの?」


その言葉に萌は返事ができなくなった。


どういう意味なのか頭の中で考えてみても、すぐに真っ白になってしまう。


「大樹くんは私と付き合ってくれるって言ったんだよ。だからキスしたのに!」


怒鳴る女子生徒の目はみるみる赤く染まっていき、涙の膜ができた。


萌は息を飲んでマジマジとその女子生徒を見つめた。


長い髪は腰に届きそうで、シャープな顔立ちはとても美人だ。


大樹はこんな子にまで手を出していたんだ……。