大樹と距離を置くようになって数日が経過していた。


いつも大樹が送ってくれる日には、それよりも早く教室を出るようにした。


廊下でもすれ違わないように気をつけたし、家の周辺に大樹が待っていないかの確認も怠らなかった。


そうして距離を開けてみると少しずつ気持ちが落ち着いてくる。


これから先どうすればいいのか考える余裕がでてきていた。


「やっぱり、これ以上は付き合えないよね」


休憩時間中、萌は希へ向けてポツリと呟いた。


その瞬間希はつらそうに表情を歪める。


一時期は大樹に執着していた希だったが、今は萌の味方だった。


「萌がそう決断するなら、それでいいと思うよ」


希は声を絞り出すようにそう伝えた。


ずっとずっと好きだった大樹が浮気するような人だったこともショックだし、親友の萌を傷つける結果になってしまったこともショックで、少し青ざめている。


「あのさ、萌……」


希がなにかいいかけたそのときだった。


教室のドアが開く音がして視線を向けるとそこには大樹が立っていた。


大樹は萌を見つけるとすぐに近づいてくる。


萌はとっさに大樹から視線を外して逃げ出そうとするが、それより先に腕を掴まれていた。


ドクンッと心臓が跳ねる。


全身の血の気が引いていくのを感じて、大樹の目を見ることができない。


「萌、やっと会えた」


大樹は安心したように微笑む。