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大樹はいつもと変わらない様子だった。


面白おかしく萌を笑わせてくれる。


部活の話とか友達の厚くんの話とか。


それを聞いている萌も飽きることなく、自然と笑顔がこぼれだす。


「どうした?」


けれど今日の萌はやはり少し上の空で、大樹はすぐにそれに気がついてしまった。


「え、なにが?」


「とぼけても無駄だぞ? ずっと萌の事を見てたらなんだってわかるんだからな」


大樹は萌の手を握りしめて言う。


暖かくて大きな手にいつもなら安堵を覚えるのに、今日の萌はなぜか焦燥感を抱いた。


この手は他の子に触れているのではないか。


他の子の手を、同じように握りしめているのではないか。


そんな不安は手を伝わって大樹に通じてしまったようで、「本当に、なにかあったんじゃないのか?」と、真剣な表情で聞かれた。


「あのさ……」


「なに?」


「大樹って、モテるよね」


直接質問する勇気のない萌は遠回りな質問をした。


大樹は目をパチクリさせている。


「なんだそれ?」


「冗談で聞いてるんじゃないの。ちゃんと答えて?」


真剣な萌の声色に大樹は怪訝そうな表情を浮かべながらも「まぁ、普通なんじゃないか?」と、返事をした。