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逃げるようにトイレの個室に入った萌だったが、現実から逃れることができないことは理解していた。


友人らから逃げたところで、問題は解決しない。


「彼氏に浮気されたことなんて1度もないし……」


つぶやき、大きく息を吐きだす。


ドラマやマンガの中でなら、浮気彼氏を問い詰めて別れたり、別の王子様のような男子が現れて手を差し伸べたりしてくれる。


けれど現実はそううまくはいかない。


初めてできた彼氏に直接問いただす勇気はまだ持っていないし、突然王子様が現れることなんてありえない。


「どうしたらいいの……」


萌はつぶやき、トイレの椅子に座り込んでしまったのだった。