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この日部活が休みだった大樹は萌を家まで送ってくれていた。


その間に交わした会話も、大樹の態度にも違和感はない。


やっぱり、あれは希の意地悪だったに違いない。


「送ってくれてありがとう」


家の前で立ち止まって見つめ合う。


周囲に人がいないことを確認してから軽くキスをするのは、もうふたりの挨拶のようになっていた。


「また明日な」


「うん。気をつけて帰ってね」


歩いていく大樹に手を振り、玄関に入ると萌は大きくため息を吐きだした。


こんなに幸せでもいいんだろうか。


大樹とキスをするたびに萌の体は元気を取り戻していく。


胸の中には好きという感情が膨れ上がり、今にも破裂してしまいそうなくらいだ。


「今日も大樹くんが送ってくれたの?」


玄関の開閉音に気がついて、リビングにいた母親がやってきた。


「うん」


ニヤけるのをどうにか抑えてうなづく。


キッチンからは美味しそうなカレーの匂いが漂ってきている。


「ねぇお母さん。仕事またフルタイムになっても大丈夫だよ?」


リビングへ向かった萌はふと思いついたことをそのまま口に出した。


母親は萌の体を心配して仕事量を減らしている。


だけど最近はとても調子がいいし、悪化するような気配もない。