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それからの萌は順調な生活を送っていた。


余命宣告を受けてから2ヶ月以上が経過しているとは思えないほど体の調子はいい。


学校でのストレスや不安もなくなったことから、倒れることもなかった。


学校で授業を受けて、友達とおしゃべりをして、帰宅したら絵の続きを描く。


そんな生活を続けていたある日のことだった。


「ねぇ、萌。ちょっといい?」


登校してすぐに希がそう声をかけてきた。


希の表情は真剣で、すぐになにかがあったのだとわかった。


「なに?」


萌と希は人の少ない廊下の奥へと移動してきていた。


「気を悪くしないでほしいんだけどね」


希はそう前置きをして、自分が見てしまったことをそのまま萌に伝えた。


「実は昨日、大樹が他の女の子とキスしているところを見ちゃったの」



「え……?」


萌は希からの告白にまばたきを繰り返した。


「なに言ってるの?」


首をかしげ、眉間にシワを寄せる萌。


「昨日駅の近くの公園で大樹を見かけたの。その時に女の子も一緒にいたから萌かなって思ったんだけど、違う子だった」


確かに、昨日萌は駅の周辺には行っていない。


学校が終わってすぐに帰宅しただけだった。


だけど、大樹とはずっと連絡を取り合っていた。


昨日は部活が終わってからまっすぐに帰ったはずだ。


「そんなわけないじゃん」