初デートから数日後、この日は萌の検査の日だった。


朝からいつもの病院へやってきて、両親と共に検査結果を待っていた。


「福永さん、こちらへどうぞ」


白衣を着た担当医が萌たちを個室へと誘導する。


その個室は萌が末期がんであることを宣告された部屋で、入る瞬間少し躊躇してしまった。


でもきっと大丈夫だ。


最近とても調子がいいし、毎日学校にだって行っている。


萌は自分にそういい聞かせて席に座った。


萌の隣には両親がいる。


「萌さんの検査結果なんですが……驚くほどに順調です」


医師の言葉に両親が同時に大きく息を吐き出した。


「この調子だとまだ学校に行くこともできると思います」


「やった!」


医師からの診断に思わず両手を上げて喜ぶ萌。


「でも油断は禁物で――」


「無茶なことはしません、絶対に!」


医師の言葉を先回りして萌は言った。


今までだって何度もそう言われてきたことだから、もう言われなくても理解していた。


「そうだね。病気の影は相変わらずそこにあって、進行が止まっているような状態だからね。無理したら悪化する可能性はあるんだ」


医師の言葉に萌は真剣に頷いた。


今の調子の良さを保つためには、日々の努力が必要だ。


やりたいことを我慢したり、みんなと同じようなことができなくても仕方がない。


それでも学校へ行くことができるし、好きな人とデートだってできる。


今の萌にとってはそれだけで十分すぎた。


「それじゃ、またなにかあったらすぐに連絡するようにしてください」


医師から元気のお墨付きをもらった萌はそのまま帰宅していた。