「お姫様は、自分の足で歩くことができるのに?」


その言葉に萌は顔を上げて大樹を見つめた。


萌の目は夕日のオレンジ色が輝いていて、今にも吸い込まれてしまいそうだ。


「お姫様は外には出られないの。そういういいつけを守っているから」


「真面目なんだ」


「真面目なんだよ」


多くのお姫様はそうなのかもしれない。


自分から動くことができるのに、そうしない。


なぜなら、生まれたときからそうしつけられてきたから。


「お姫様、王子様が到着しましたよ」


砂の城の横に人間っぽい塊を作って大樹は言った。


「えぇ、これが王子様?」


萌はどこか不服そうな顔だ。


でも仕方ない。


ちゃんとした人間を作るには時間が必要だから。


「城から出てくる時間です。お姫様」


構わずに続けると萌は少し笑って、城の前にお姫様らしき人物を作った。


どっちも負けず劣らず人間には見えない出来栄えだ。


「このまま連れ去ってもいい?」


大樹は砂の人形を通して萌へ向けていった。


「もちろん。そのためにお姫様はずっとお城にいたんだから」


萌の言葉に大樹はハッとした。


お姫様がずっとお城で待っていたのにはちゃんと理由があるのかもしれない。


王子様が見つけやすいように、その場に留まっていたのかもしれない。


「じゃあ、遠慮なく」


大樹はそう言うと萌の手を握りしめた。