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萌が明日を楽しみにしてようやく眠りについた頃、大樹はベッドの中で悪夢にうなされていた。


さっきから何度も寝返りを打ち、額には脂汗が浮かんできている。


しかし夢はしっかりと大樹を掴んで現実に戻ることを許さない。


夢の中で大樹は学校の廊下にいた。


それはいつも見慣れた校舎だったが、どこか様子がおかしいとすぐに気がついた。


ふと気がついたのは蛍光灯がすべてついていないことだった。


校舎内を照らしている光は窓から差し込む陽の光だけで、それも今はとても弱々しい。


一体今は何時なんだろう?


ふと疑問を感じても時間を確認するものは持っていなかった。


しかし、校舎内には人の気配がなくて、今が早朝か、放課後の遅い時間であることだけはわかった。


どうして自分はこんな時間にこんなところにいるんだろう。


早く帰らないと。


その思いで昇降口へむかったとき、廊下に置かれているゴミ箱に視線が向かった。


ゴミ箱の横にはピンク色の手紙が落ちていて、大樹はそれに引き寄せられるように近づいた。


その手紙になにが書かれているのかすでに知っている大樹は、無意識のうちに『拾うな!』と願っていた。


大樹の願いは虚しく、夢の中で手紙は拾われてしまった。


そして現実世界と同じように好きな子の余命を知ってしまう。


夢の中の大樹がその場に崩れ落ちて膝をつく。


最初のころと全く同じようなショックが全身にかけめぐり、そこから逃れることができない。