「それで、体はどうなの?」


ぶっきらぼうだけれど心配してくれているのがわかり、萌は嬉しくなってしまった。


「もうすっかり大丈夫だよ! 昨日なんて家でこれだけ食べてきたんだから!」


両手で料理の大きさを表現して笑う。


「そっか。でも、先生から聞いたよ、あまり良くないんだって?」


その言葉に萌の顔から笑顔が消える。


「え、先生から聞いたって、どうして?」


病気のことはまだ誰にも話していないはずだ。


先生にも勝手に説明しないように伝えていたはずなのに……。


「3回も学校で倒れたんだよ? 先生だって質問攻めにあって説明するしかなかったんだよ」


「じゃ、じゃあ……」


「詳しいことは聞いてないけど、あまり無理できないんでしょう?」


その言葉に萌は内心ホッとしていた。


まさか余命のことまで伝えられたのではないか。


そのため希が謝罪してきたのではないかと考えたのだ。


けれど、さすがにそこまでではなかったようで安心した。


「そうだね。今までよりももっとみんなに迷惑かけるかもしれない」


「そんなの、こっちは気にしない。っていうか、萌にやったこと、みんな反省してるし」


今までクラス全員で無視してきたことを言っているのだろう。


希はうつむきかげんに呟いた。


「それはもう大丈夫だよ。いつもどおり学校に来ることができて嬉しい」


萌は微笑んで答えた。


無視の原因が希であったことはショックだったが、それを言えば今度は希がみんから白い目で見られるようになるかもしれない。


それは萌にとって、自分が無視をされる以上に辛いことだった。


萌につられて希も笑う。


やっぱり、萌の笑顔には周りを明るくする力があるみたいだった。