「え? どういうこと?」


怒った声色になる希に萌はますますわからなくなる。


どうしてここで大樹のことがでてくるのかもわからない。


「私はずっと大樹のことが好きだったの! だから萌に取られたと思っちゃって……」


そこまで言って声が小さくなり、最後には消えてしまった。


希は顔を真っ赤にしてうつむいている。


「そ、そうだったんだ!?」


初めて聞いた希の気持ちに萌は素直に驚いていた。


「やっぱり、全然気がついてなかったんでしょ」


「だって希、そんな素振り全然してなかったじゃん」


「そりゃそうだよ。告白する勇気がないから、誰にも気が付かれないようにしてきたんだもん」


幼馴染という立場を壊さないようにしてきたのは希だった。


一歩踏み出すことでその関係が壊れてしまうかもしれないのがこわかった。


そうして仲のいい女友達で居続けた結果が、これだった。


「他の子たちにもちゃんと説明したから」


そう言われて、萌はようやくクラスで孤立していた原因が大樹と付き合い始めたことであると気がついた。


今までそれにすら気が付かなかったなんて、自分が情けなくなる。


とにかくようやく希と仲直りができたことに喜びを感じていた萌だったが、希の方はまだ納得していない様子だった。