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萌が退院した日、家で小さなお祝いをした。


そこには大樹も呼ばれ退院祝いに大きな花束を用意してくれていた。


「こんな花束買ってきてくれたの!?」


両手いっぱいの花束は持つと重たいくらいで萌は目を見開いた。


「あぁ。花屋で注文するとき、お姉さんにクスクス笑われて恥ずかしかったんだ」


大樹は照れ笑いを浮かべている。


「『彼女さんにですか? いいですねぇ』ってさ」


そのときの大樹の様子を想像して萌は声を上げて笑った。


きっと顔を真赤にしてとまどったに違いない。


「あははっ。その時の大樹の顔見たかったなぁ」


元気に笑う萌に大樹もつられて笑う。


萌が嬉しそうにしていると自然とその場が明るくなっていく。


「さぁ、大樹くんも沢山食べてね」


いつも萌によりそって病院へ来てくれていた大樹はすでに両親とも打ち解けていて、信用されている。



目の前に出された豪華な料理たちに大樹は「どれから食べようか」と悩んでいる。


「どれからでもいいよ。だってお母さんの料理は世界一おいしいから」


「あら、そんなこと言ってくれるなんて嬉しい」


試しに食べたサンドイッチは本当に美味しくて大樹は目を見開いた。


「ね、言った通り美味しいでしょう?」


「本当だね。こんな料理を毎日食べられるなんて羨ましいよ」


次々料理へ手の伸ばしながら言った言葉に萌が少し顔を赤らめた。


「私も、料理は得意なんだよ?」


「へぇ、そうなんだ?」


「だって……将来の夢はお嫁さんだから」


テレた様子でそう言う萌に大樹は食べる手を止めた。