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『別に、萌が倒れた原因はクラスメート全員からシカトされてることが原因じゃないから、気にする必要はない』


授業中も大樹から言われた言葉が頭の中をグルグルと回っていて離れなかった。


萌がクラスメートから無視されるようになったのは、間違いなく希のせいだった。


萌が大樹と付き合い始めたとき、ついクラスメートたちに『大樹を横取りされた。私はずっと昔から大樹のことが好きだったのに』とこぼしてしまった。


それを聞いたクラスメートたちは一方的に萌を悪者と捉えてしまった。


そしてそれを、希は正そうとはしなかった……。


萌は今までにも何度が学校内で倒れているから、なにか体に異変があったことが希も気がついていた。


それに関して萌はなにも言ってきてくれなくて、それが希の心の中に大きな壁を作ることにもつながっていた。


私達、親友じゃなかったの?


どうして隠し事をするの?


萌のことを見て見ぬ振りしながらも、心の中ではずっとそんなふうに思っていたのだ。


それに、萌が美術室で倒れたのを発見したとき、希は本当はすごく動揺していた。


どうすればいいかわからなくなり、でも結果的にはそのまま放置することになってしまった。


その結果、今萌の病気が悪化しているのだとしたら?


考えるだけで体の芯が冷えていくのを感じた。


自分はとんでもないことをしてしまったのかもしれない。


「私は悪くない……」


授業は一切に身に入らず、自分の席で頭を抱える。


「ちょっと希、どうしたの?」


そんな声に顔をあげると、いつの間にか授業は終わっていて、クラスメートが心配している。


「私、私……とんでもないことをしちゃったかもしれない」


か細い声で希はつぶやくのだった。