☆☆☆

萌が病院内でモヤモヤとした気分でいるとき、大樹は学校内で希に声をかけられていた。


当然、希も、萌がまた学校で倒れて入院中であることは知っている。


「あのさ」


気まずそうな顔で声をかけてくる希に大樹は一瞬眉間にシワを寄せてしまった。


希には萌のことを気にかけてやってほしいと伝えたが、なぜかそれを断られている。


大樹にはその理由が未だにわからないままだった。


「萌なんだけど、大丈夫そうなの?」


「心配なら、自分で病院に行ってみたらいいだろ?」


大樹は萌が入院してから毎日病院へ行っているが、萌のクラスメートが病室を訪れていることは1度もなかった。


その白状さにも苛立ちを感じていたのだ。


希は大樹に突き放されてうつむいてしまった。


「別に、萌が倒れた原因はクラスメート全員からシカトされてることが原因じゃないから、気にする必要はない」


まるで被害者のような顔をしてうつむく希のことが腹立たしくて、ついそんなことを行ってしまった。


ハッとしたように希が顔を上げる。


その目は少しだけ潤んでいるようだった。


女子を泣かせる趣味はないけれど、クラスメート全員から無視されてきた萌の気持ちを考えると、ひとこと言わないと気がすまなかった。


「まぁ、そのストレスが倒れるキッカケくらいにはなったかもしれないけどな?」


大樹はそう言うと希に背を向けてしまったのだった。