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入院してから萌の病状は安定しているように見えた。


萌自身も食欲があるし、とても元気で暇な時間が多くて困っているのだと大樹に愚痴るようになった。


そうなってくると今度はいつ退院だろう。


今度はいつ学校へ行くことができるだろうかと、そればかりが気にかかってきてしまう。


「ねぇ、先生、数値はいいんだよね?」


1日1回、担当医が病室にやってきたときに萌はそう聞いた。


「そうだね。もうすっかり大丈夫そうだ」


「それなら学校へ行けるんじゃない!?」


「確かに行けるかもしれないな。でももう少しだけここで様子を見るのはどうかな?」


「どうして!?」


「君はもう3回も学校で倒れてるんだ。どれだけ数値が安定していたとしても、同じ場所で何度も倒れるってことは、その場に悪化する原因があるかもしれないな」


「そんな……」


担当医の言葉には萌に突き刺さるものがあった。


学校は大好きなのに、最近友人関係が全くうまく行っていない。


その結果としてストレスを感じてることは事実だった。


そしてそのストレスが病気を悪化させていることも。


「もう少しだけだ」


担当医は萌にほほえみかけて病室を出ていってしまうのだった。