気付けば朝。というか昼になり、目を覚ますと山根はもう起きてゲームをしていた。

 起き上がる俺に気付くとゆっくりと振り向く。
「お前はよくも風呂も入らず俺のベッドで寝てくれたな」
 俺はベッドの上で土下座をしてひたすら謝る。
 山根は、とりあえず風呂入ってこい臭いから。とバスタオルを俺に投げた。
「あ、ありがとうございます」
 俺はタオルを受け取って風呂場へ向かった。
 風呂場へ行く途中、台所にいた山根の母さんに挨拶をする。
「あ、もうすぐご飯できるから。食べてくでしょ?」
「はい! ごちそうになります!」
 山根と同じ顔で笑う山根の母さんに頭を下げて風呂場へまた向かう。
 もう何度も、お互いの家に泊まってるので家族全員知り合いになっていた。
 そして山根の母さんの料理が美味いことを知っている俺は、密かにガッツポーズをして風呂に入った。


 ご飯もしっかりご馳走になり、山根とゲームに熱中していたら夕方になったのでさすがに家に帰ることにした。
 帰り際、山根が明後日に聡美ちゃんと遊ぶと言い放った。
「さすが!」
 俺は拍手を送って自転車に跨がる。
 良い気分で海沿いを颯爽と走っていると、妹が買い物袋を手に歩いているのを見つける。
「おい。何してんだ?」
 どうやら牛乳を買いに行かされたらしく、妹は俺の自転車を見るなり歩くの疲れたから後ろに乗せてと聞かない。
 頑固さは折り紙付き。声をかけた事を後悔しながら仕方なく妹を荷台に乗せて走り出した。
「ねぇ、デートどうだったの?」
 突然切り出された妹の言葉に一瞬「?」となったがすぐに思い出す。
 そうだ。初めて杉川さんと話したあのお疲れ会の時にデートと見栄を張って服を選んでもらったんだ。
「あー、あれね。楽しかったよ。お陰様で」
 なんとなく濁してみたのだが、妹はそれでは納得しない。
「だから! 付き合ったの? その人とはどうなったの?」
 しつこく聞いてくる妹。さすがにに気まずい。
「どっちだっていいだろ? 楽しい一日だったよ! それでいいだろ!」
 と無理矢理煙にまくと妹は、振られたか。と笑った。
「ち、違うよ! バカ!」
「いーよ。無理しないで」
 こうなってはもう否定は何の意味も持たない。ハァっとため息を漏らす。
「兄ちゃんダサいからねー! 仕方ないよ!」
 妹は何故か嬉しそうだったので無視して思いっ切りペダルを漕いだ。
「いいぞ! もっと早く!」

 後ろの妹は更にはしゃいだ。