土曜日は曇り空だった。雨は降らないと天気アプリは言っているけれども、空からは今にも水が落ちてきそうな雰囲気だ。せっかく松本選手に会えるのに天気で気分が少し下がってしまう。
今日の服装はスポーティーを意識したもの。一応、スポーツ観戦だからそこは気を使う。本来ならばもう少し可愛い感じの服装がいいのだけれど、今から行くところは合コン会場ではないので我慢する。でもいつか、いつか可愛い姿を松本選手に見てほしいなんて心の片隅に思いを置いておく。もし、松本選手と付き合ったらどんな感じなんだろうか。かっこよくエスコートしてくれるのか。それとも恋人の前では甘々になってくれるのだろうか。いつから私はこんなにピュアになったのと思うほどに顔が赤くなってしまう。今までにこんな感情はなかったし、付き合ったら身体の事しか考えなかった。そんな私が身体のことよりも心のことを考えているのは松本選手という好きな人の力なのだろう。
ふと、時計を見るとそろそろ出発しないと初戦に間に合わない時間だ。急いでバックの中に必需品を詰める。しかし大荷物にならないように。モテる美人は荷物が少ないという説を信じているから。私は戸締りを確認して、家から出る。これも出来る女と思われるように。左手には傘を持って、今日松本選手が試合をする体育館に向かった。
早歩きは結構きつい。走るよりはマシなのだがふくらはぎと、前ももが「もう歩くな」と訴えている。早く会いたい気持ちもそうだけど、時間に余裕を持つ女を貫きたくて頑張った。家での妄想が無ければゆったりと歩いてこれたのにと少し苛立つ。自業自得なのだか。
今日、試合が行われる体育館は少し大きめで綺麗な感じの場所だった。ここなら集中して松本選手を応援できるだろう。松本選手を応援し始めてから沢山の体育館に足を運んだ。とは言っても遠征はついて行けなかったけど。その中でも前々回の体育館は酷かった。外装はヒビが入っていていかにもボロい。中に入ると観客席に椅子はあったけど所々欠けていたり、蜘蛛の巣が付いていたりと衛生的にも汚かった。1番最悪だったのはトイレだ。もう、思い出したくもない。またあの体育館で試合があったらどうしようと悩んでいる。それくらい酷かった。でも今日はそういう心配は無さそうだ。
私は悲鳴を上げる足を無理矢理動かしながら中へと入っていく。部員なのか親なのか友達なのかわからない人達が大勢いる中、私は人を避けながら2階の観客席へと上がっていく。階段が地味にキツくて足が止まりそうになる。しかしここで止まるわけにもいかなくて、気合いで観客席まで辿り着いた。
「お願いしまーす」
「これ、ここでいいですか?」
「今日の試合どうなりますかね?」
「松本らへんが出れば良い試合になると思いますよ」
広い会場だからこそバレー部の声が響き渡り、観客の話し声がよく聞こえて来る。途中途中に松本選手の名前が出ていて嬉しくなりながら私は1番下の端っこの席に座った。二つのコートで試合を同時進行にやるため端っこの席だと反対側になってしまった時に大変なのだが、見やすい席は私のような部外者ではなく選手の家族だったり、先生方だったりが占領するので必然的にこの席になってしまう。しかし慣れたものだ。去年の夏くらいから通い続けているので暗黙の了解はわきまえている。私はあくまで部外者なのだと。それはそれで悲しいのだが。
すると、松本選手の大学のチームが出てきてウォーミングアップを始めた。すぐに私は松本選手を見つけてたった1人だけを目線に入れて追う。走る姿もかっこいい。ウォーミングアップ中はユニホームではなくジャージ姿なのがまたいい。半ズボンに上は長袖のジャージを着ている。少し短めのサラサラな髪をなびかせるのもたまらない。ずっと見ていられる景色だ。思わず口角が上がりそうになってしまうけどそれを耐える。流石にニヤニヤして見ていたら出禁にされてしまうかもしれない。そういえば、茉莉がアイドルのグループイベントで変なことやらかすと出禁喰らうから気をつけなくてはなんて言ってた気がする。変なこととはどんなことなのかはわからないけど、好きな人を見てテンションが上がってしまうのは私もよくわかる。既に今もそうだ。
そして数十分後には選手達の体は温まって試合が始まった。他の選手の激しい動きに目が行きそうになるけど、私はずっと松本選手を捉えていた。
ジャンプした時に揺れるサラサラの髪。
細い足を後ろに蹴り上げる瞬間。
相手が取りづらいところに落とす計算力。
得点して仲間と輪になる一瞬に見える笑顔。
試合の得点なんて関係なかった。私はただ、松本選手が見れるだけで十分だった。
今日の服装はスポーティーを意識したもの。一応、スポーツ観戦だからそこは気を使う。本来ならばもう少し可愛い感じの服装がいいのだけれど、今から行くところは合コン会場ではないので我慢する。でもいつか、いつか可愛い姿を松本選手に見てほしいなんて心の片隅に思いを置いておく。もし、松本選手と付き合ったらどんな感じなんだろうか。かっこよくエスコートしてくれるのか。それとも恋人の前では甘々になってくれるのだろうか。いつから私はこんなにピュアになったのと思うほどに顔が赤くなってしまう。今までにこんな感情はなかったし、付き合ったら身体の事しか考えなかった。そんな私が身体のことよりも心のことを考えているのは松本選手という好きな人の力なのだろう。
ふと、時計を見るとそろそろ出発しないと初戦に間に合わない時間だ。急いでバックの中に必需品を詰める。しかし大荷物にならないように。モテる美人は荷物が少ないという説を信じているから。私は戸締りを確認して、家から出る。これも出来る女と思われるように。左手には傘を持って、今日松本選手が試合をする体育館に向かった。
早歩きは結構きつい。走るよりはマシなのだがふくらはぎと、前ももが「もう歩くな」と訴えている。早く会いたい気持ちもそうだけど、時間に余裕を持つ女を貫きたくて頑張った。家での妄想が無ければゆったりと歩いてこれたのにと少し苛立つ。自業自得なのだか。
今日、試合が行われる体育館は少し大きめで綺麗な感じの場所だった。ここなら集中して松本選手を応援できるだろう。松本選手を応援し始めてから沢山の体育館に足を運んだ。とは言っても遠征はついて行けなかったけど。その中でも前々回の体育館は酷かった。外装はヒビが入っていていかにもボロい。中に入ると観客席に椅子はあったけど所々欠けていたり、蜘蛛の巣が付いていたりと衛生的にも汚かった。1番最悪だったのはトイレだ。もう、思い出したくもない。またあの体育館で試合があったらどうしようと悩んでいる。それくらい酷かった。でも今日はそういう心配は無さそうだ。
私は悲鳴を上げる足を無理矢理動かしながら中へと入っていく。部員なのか親なのか友達なのかわからない人達が大勢いる中、私は人を避けながら2階の観客席へと上がっていく。階段が地味にキツくて足が止まりそうになる。しかしここで止まるわけにもいかなくて、気合いで観客席まで辿り着いた。
「お願いしまーす」
「これ、ここでいいですか?」
「今日の試合どうなりますかね?」
「松本らへんが出れば良い試合になると思いますよ」
広い会場だからこそバレー部の声が響き渡り、観客の話し声がよく聞こえて来る。途中途中に松本選手の名前が出ていて嬉しくなりながら私は1番下の端っこの席に座った。二つのコートで試合を同時進行にやるため端っこの席だと反対側になってしまった時に大変なのだが、見やすい席は私のような部外者ではなく選手の家族だったり、先生方だったりが占領するので必然的にこの席になってしまう。しかし慣れたものだ。去年の夏くらいから通い続けているので暗黙の了解はわきまえている。私はあくまで部外者なのだと。それはそれで悲しいのだが。
すると、松本選手の大学のチームが出てきてウォーミングアップを始めた。すぐに私は松本選手を見つけてたった1人だけを目線に入れて追う。走る姿もかっこいい。ウォーミングアップ中はユニホームではなくジャージ姿なのがまたいい。半ズボンに上は長袖のジャージを着ている。少し短めのサラサラな髪をなびかせるのもたまらない。ずっと見ていられる景色だ。思わず口角が上がりそうになってしまうけどそれを耐える。流石にニヤニヤして見ていたら出禁にされてしまうかもしれない。そういえば、茉莉がアイドルのグループイベントで変なことやらかすと出禁喰らうから気をつけなくてはなんて言ってた気がする。変なこととはどんなことなのかはわからないけど、好きな人を見てテンションが上がってしまうのは私もよくわかる。既に今もそうだ。
そして数十分後には選手達の体は温まって試合が始まった。他の選手の激しい動きに目が行きそうになるけど、私はずっと松本選手を捉えていた。
ジャンプした時に揺れるサラサラの髪。
細い足を後ろに蹴り上げる瞬間。
相手が取りづらいところに落とす計算力。
得点して仲間と輪になる一瞬に見える笑顔。
試合の得点なんて関係なかった。私はただ、松本選手が見れるだけで十分だった。